研究課題/領域番号 |
18K04307
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
審良 善和 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (60639376)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 鉄筋腐食 / コンクリート構造物 / 腐食速度 / 分極挙動 / アノード / カソード |
研究実績の概要 |
塩害環境下におけるコンクリート中鉄筋の腐食は耐久性を著しく低下させる要因の一つである。今後、より戦略的、効率的な維持管理を達成させるためには、潜伏期および進展期の劣化予測が極めて重要となる。一方、コンクリート中の腐食に関する研究は、腐食発生限界塩化物イオン濃度や長期暴露試験等による腐食量に関する研究によって多くの知見が得られているものの、経年的な腐食挙動や構造物が置かれる外部環境の違いによる腐食挙動に関する定量的な把握までは至っていないのが現状であると考えられる。 そこで、本研究では、腐食に関して様々な条件下にあるコンクリートに埋設された鉄筋に対して電気化学的な計測を行うことで、種々の環境下における鋼材腐食の電気化学的挙動を正確に把握し、これらの現象を鋼材腐食の経年的な劣化現象として整理することで、腐食モデルを構築することを目的として検討を行う。 今年度の検討では,異なる品質のコンクリート(セメント,W/C,内在塩化物イオン濃度を変えたコンクリート)を用いたφ10×20cmの円柱供試体の中央にあらかじめ鉄筋を埋設した供試体を作製し,一般大気環境,軒下環境,土中,海上大気中,干満帯,海水中の各環境に暴露した.その後,鉄筋の自然電位を測定し,電位が定常状態になった時をその供試体中の鉄筋の腐食状態として設定した.その後,直線分極試験を実施し,それぞれの環境下におけるコンクリート中鉄筋の分極特性を評価した.その結果,屋上,軒下,海上大気などの大気環境に暴露されたコンクリート中鉄筋の腐食挙動は分極曲線によって評価できることが分かった.また,その結果を用いて腐食速度式を推定できる可能性を見出せた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間は3年間を計画しており,全体計画では,今年度は供試体の作製および暴露試験の開始とともに,環境および鉄筋の電位のモニタリングまでとしていた.これに対して,海上大気中や一般大気中等の比較的乾燥した環境においては,電位モニタリング結果から腐食環境が定常状態になったと考えられたため,直線分極試験および多周波インピダンス試験を実施している.この結果から,屋上,軒下,海上大気などの大気環境に暴露されたコンクリート中鉄筋の腐食挙動をある程度評価することができた.今後は,供試体の解体調査による腐食減量の実測値などを測定し,進展期における腐食速度予測モデルの構築を行う予定である.以上のことから,3年計画である本研究において,概ね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
本研究は,概ね順調に進捗していることから,引き続き検討を実施する予定である. ただし,想定した塩化物イオン濃度下での腐食速度が評価できていない可能性もあるため,次年度,再度供試体を作製し,再検討する予定である. また,海水中に暴露した供試体のように,貧酸素下にある鋼材の分極挙動については,不明なところも多く,別途,室内実験等により,そのメカニズムを電気化学的に考察する予定である.
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