本研究は、様々な環境条件下にあるコンクリートに埋設された鉄筋に対して電気化学的な計測を行うことで、種々の環境下における鋼材腐食の電気化学的挙動を正確に把握し、これらの現象を鋼材腐食の経年的な劣化現象として整理することで、腐食モデルを構築することを目的として検討を行うものである。 検討では、塩害による鉄筋腐食に着目し、異なる品質のコンクリート(セメント、W/C、内在塩化物イオン濃度を変えたコンクリート)を用いた鉄筋コンクリート供試体を一般大気環境,軒下環境,土中,海上大気中,干満帯,海水中の各環境に暴露し、電気化学的計測を継続的に実施した。また、供試体を解体し、実際の腐食減量と比較することで、電気化学的計測による推定腐食量の妥当性を検証することができた。また、コンクリート中鉄筋表面の環境を人為的に操作可能な腐食試験装置を作製し、コンクリート中鉄筋のアノード分極特性の把握を試みた。その結果、コンクリート中鉄筋のアノード分極挙動について、不働態維持電流密度や孔食電位の変化、ターフェル勾配などを定量的に評価することができた。また、酸素や水の影響を受けるカソード分極挙動についても、酸素濃度を変化させることで、セメント種類の異なるコンクリート中の鉄筋のカソード特性を評価することができた。以上の結果を踏まえ、コンクリート中鉄筋の腐食問題に対して、コンクリート中の塩化物イオン濃度の違いによるアノード分極挙動の変化と酸素供給量の違いによるカソード分極挙動の変化について定量的に整理することができた。これらの関係から、塩害環境にあるコンクリート構造物の腐食の進行を予測するモデルを構築することができた。
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