研究実績の概要 |
高炉セメントを用いたコンクリートは,著しいひび割れが見られる場合とそうでない場合があり,高炉セメントの銘柄により収縮特性が大きく異なることが指摘されているが,その原因は十分に明らかでない。本研究では,(1)高炉スラグ微粉末(以下,スラグ)の化学組成とスラグの水和活性との関係に着目し,粉末X線回折(XRD)/リートベルト法を用いた精緻な水和反応解析手法により高炉セメントの体積変化(乾燥・自己収縮)に及ぼすセメントやスラグの物理・化学的性質を明らかにした上で,(2)体積変化の少ない高炉セメントの組成を提案することを目的とする。2018年度の研究成果の概要を以下に示す。 高炉スラグ微粉末(BFS)の水和活性及び硬化体の自己収縮量に及ぼすスラグ化学組成の影響について検討した。JIS塩基度が1.73~2.03のBFS6種類を用い,BFS-水酸化カルシウム-無水石こうを結合材とした硬化体を作製し,粉末X線回折/リートベルト法により水和反応解析を実施した。BFS反応率と水和生成物量に高い相関が認められ,アルミネート系水和物の生成量が多いほど,毛管空隙は減少した。BFS6種類を用いて作製した高炉セメントB種モルタルの自己収縮量には差異が認められ,Al2O3, MgO量の多いBFSはモノサルフェート,ハイドロタルサイトの生成量が多くなるために自己収縮が大きくなると推察された。また,市販の高炉スラグ微粉末3銘柄を用い,高炉セメントB種相当のセメントを作製して自己収縮量を測定し,スラグ銘柄により自己収縮量に差異のあることを確認した。 さらに,BFS置換率を25, 45, 65 %と変化させたJISモルタルの乾燥収縮量を測定した。その結果,各セメントの乾燥収縮量は,材齢91日で600-680 ×10-6程度と概ね同程度であり,モルタルの乾燥収縮量はスラグ置換率には依存しないことを明らかとした。
|