研究課題/領域番号 |
18K04315
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
櫨原 弘貴 福岡大学, 工学部, 助教 (70580182)
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研究分担者 |
玉井 宏樹 九州大学, 工学研究院, 助教 (20509632)
小池 賢太郎 鹿児島大学, 理工学域工学系, 助教 (30781992)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 表面含浸材 / シラン系表面含浸材 / 自然電位 / 分極抵抗 / 静電場解析 |
研究実績の概要 |
昨年度の研究成果より表面含浸工法を適用した鉄筋コンクリートにおいて,含浸材の影響により自然電位や分極抵抗値を適切に測定できないことが分かっている。そこで,含浸材の塗布が自然電位および分極抵抗に与える影響についてさらなる検討を行った。本年の研究成果として以下の新たな知見を得ることができた。(1)表面含浸材が適用されたコンクリート構造物において自然電位を測定すると,含浸材の影響によって非腐食側に測定されることが分かった。(2)実際の自然電位が-350mVよりも卑である場合でも,含浸面から測定すると非腐食として判定される可能性がある。(3)含浸材が自然電位および分極抵抗に与える影響は,表面の撥水角や吸水抑制効果よりも含浸深さの影響が大きいことが分かった。(4)提案した有限要素法による静電場解析によって,補正係数を算出することで,0.02Hz以下で測定された分極抵抗値を適切に補正することが可能であった。(5)0.01Hzと0.02Hzで測定された分極抵抗値の比をとると,含浸面と非含浸面で同様の値を示すことが分かった。そのため,分極抵抗比と腐食の関係性を明らかにすることで,含浸材を塗布した構造物においても分極抵抗によって腐食状態を適切に評価できると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
腐食が発生していないコンクリート供試体において表面含浸材が自然電位や分極抵抗法に与える影響およびその補正法について知見と成果を得られている。しかし、予想よりも鉄筋の腐食発生開始時期が6ヶ月程遅く、腐食後の自然電位や分極抵抗値の違いについては、十分な知見を得ることができていない。そこで、供試体静置環境を乾湿繰返し環境に切り替えて、供試体の腐食促進を行っている。年度末辺りから、徐々に腐食が発生する供試体が発生してきており、本年度までには、十分に目標を達成できる試験体数を確保できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現時点では、腐食した供試体が少なく表面含浸材が腐食発生後の自然電位や分極抵抗法に与える影響を明らかにできていない。腐食発生後の表面含浸面と埋込電極からそれぞれ測定された自然電位および分極抵抗値の違いを明らかにし、自然電位による腐食発生電位の閾値の推定、分極抵抗値の換算係数および静電場解析により電流分布の違いを明らかにする。また、研究開始から実環境に暴露してある供試体を用いて、含浸材の性能低下が電気化学測定結果に及ぼす影響についても明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コンクリート供試体を解体する際に使用する物品を購入予定であったが、本年度に腐食したコンクリート供試体が当初の予定よりも少なかったため、物品費に残高が生じている。これは、腐食した時点で物品を購入するため次年度に使用することになる。
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