研究実績の概要 |
本研究では、MnーFe系イオン交換体(CsやAsを選択的に吸着)と安価な担体を用い、ゲル状成形を行い、有害物質の拡散防止材料を開発する。 平成31年度は、3か年計画の2年目で、ゲル状成形体の強度、有害イオン(主にCs)の遮蔽性を評価した。はじめに、異なる濃度(1, 2, 3, 4 %)の寒天ゲルを作成し、レオメーターを用いて、破断応力の測定を行った。濃度と共に約10から80kPaまで強度は増加した。次にCs吸着性を有するNaBirのスラリーを等量添加した2%寒天ゲルの測定を行ったところ、約20kPaと半減した。吸着剤を寒天ゲルに分散させた場合、ゲル強度が低下することを考慮し、初期寒天濃度を高めに設定することにした。NaBir寒天溶液(1.5%)を調製し、24mL注射筒(4本)に、3, 6, 9, 12 mLずつ入れ、室温で凝固させた。注射筒上部に10mM HCl 10mLを添加し、注射筒下部に接続した三方コックを解放し、透過する液量から、遮水性を評価した。ゲル量3mLを除いて、3日経過後も透過は見られなかった。上部HCl溶液の組成を分析したところ、ゲル量に関係なく、Naが6.5mM, Mnが0.7mM程度観測された。界面付近のみでの溶解、イオン交換反応が示唆された。注射筒上部の溶液を1mM CsCl 10mLに交換し、Cs核酸防止性能を評価した。ゲル量が多い程、Cs濃度が減少し、Na濃度が上昇した事から、吸着剤とのイオン交換反応で、Csを低減していることが判った。14日後と27日後の残存率を比較した場合、Csの除去が進んでいなかった。ゲル内のNaBirによる吸着より、Csは、希釈効果により濃度低下していたことが示唆された。NaBirよりCs選択性の高いプルシアンブルーナノ粒子についての検討も行い、寒天相を工夫することで、Cs拡散防止剤として使用できる見込みが得られた。
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