研究課題/領域番号 |
18K04321
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
鈴木 啓悟 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (40546339)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 非破壊検査 / 超音波探傷 / 画像化 / 線形化逆散乱解析 |
研究実績の概要 |
社会基盤構造物の損傷を早期発見するための診断手法が重要視されるなかで、プレストレストコンクリート(以下PC)構造物のPC鋼線、鋼棒(以下、これらを総称してテンドンと称する)の破断診断が課題の一つとなっている。テンドンはPC構造の耐荷力の根幹を成す構成材であり、破断状況によっては耐荷力喪失事故を招く。本研究はプレテンション型PC構造を対象に、テンドンの腐食損傷の兆候を早期に把握し、腐食発生と破断の有無を診断するための超音波探傷技術を構築する。 2018年度は健全な鋼棒と腐食鋼棒を配したコンクリート試験体を製作した。腐食鋼棒は5%濃度の塩水を一日2回、2か月間継続的に塗布し、人工的に腐食を生じさせた。同時に腐食させた鋼棒の減肉厚を計測したところ、平均腐食減肉厚は0.07mmであった。本試験体に対して複数探触子を用いたピッチキャッチ探傷を実施し鋼棒からの信号抽出を図った。適用する探傷波形には寄生的離散ウェーブレット変換に基づくフィルタリング処理(以下、寄生フィルタ)を施し、ノイズの低減および必要信号の抽出を図った。寄生フィルタのベースとなる波形には、1.腐食鋼棒から反射波形(1-1数値シミュレーション、1-2実験)、2.健全鋼棒からの反射波形(2-1数値シミュレーション、2-2実験)を用い、適用性を比較検討した。この結果健全鋼棒からの寄生フィルタ作成において良好な結果を得ることができ、健全鋼棒と腐食鋼棒の信号強度比はおよそ30%の差別化をすることが可能となった。よって信号抽出のフィルタ設計には健全鋼棒の反射波の利用が有利であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度に予定していた散乱波抽出用フィルタの設計について、実験と数値シミュレーションの両アプローチから寄生フィルタを構築・評価し、有効なフィルタ設計の道筋をつけることが出来ており、比較的順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
信号強度については、腐食鋼棒と健全鋼棒との差別化を向上させた一方で、画像化結果で示される鋼棒の再構成像については、客観的な判別の点でさらなる改善が必要である。信号強度を高めた実験を行うことで画像上の判断をしやすくする。また、腐食レベルの異なる鋼棒を導入したコンクリート試験体に対して探傷し、腐食段階の判定を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ計測・分析用に計上していたPC2台を、1台の高性能PCへと変更したこと、また探傷コントローラのマルチプレクサは本予算とは別に購入することが可能となったこと、試験体製作は学内他研究室の協力を得て、セメント、骨材の材料費を低減したことが理由である。 2020年度は計画通りの予算執行のもとに研究を遂行予定であるが、新たに試験体を製作するための予算として次年度使用額を適用する。
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