研究課題/領域番号 |
18K04324
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
長尾 毅 神戸大学, 都市安全研究センター, 教授 (30356042)
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研究分担者 |
竹山 智英 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (00452011)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 杭地盤相互作用 / 側方流動 / 土圧 / 3次元効果 |
研究実績の概要 |
港湾構造物の桟橋は杭で上部工を支える構造であり,背後の土圧等の影響により大地震作用時には必ず海側への大きな残留変形が生じる.設計時には桟橋と地盤を一体的にモデル化した2次元有限要素法による有効応力解析手法で評価することが一般的であるが,3次元の構造を2次元でモデル化するために,杭間の地盤のすり抜けを十分には考慮できないなど,実構造物との間に乖離がある.特に現在の設計法は直径1m程度の鋼管杭基礎桟橋を対象に構築されていることから,直径6m程度の高剛性基礎桟橋に対して現行設計法はそのまま適用できない可能性が高い. 本研究では高剛性基礎を有する桟橋の耐震設計法を開発することを目的に,室内実験によって側方流動発生時の杭に作用する土圧と地盤のすり抜けを検討した.土槽の底版上に2 本の鋼鉄製の模型杭を固定し,底版とは独立した土槽枠をメガトルクモータで水平載荷することにより,土槽内の模型地盤に水平変位を与えた.長さの縮尺は1/100とし,地盤変位は部分的に敷設した色砂の変位をモニターした.杭径と杭間隔を変化させた5ケースの実験を実施した. 実験結果として,土圧は複数のピークを示しながら漸増し,土圧第一ピーク発生時の土圧と変位の比が杭上段と杭下段で異なっていることから,水平地盤反力係数が上下で異なり,拘束圧や深度に依存することが示された.設計ではこの係数の深度依存を無視することが一般的であるが,その設定は妥当でないといえる.載荷により水平方向では杭間で地盤のすり抜けが生じ,鉛直変位では杭前面(載荷側)の地表面が盛り上がり,杭背面では下がる結果となった.計測された土圧と設計時の想定などとの比較により,側方流動時の土圧のモデルを検討する基礎資料を得た. このほか次年度以降の検討の準備として,3次元有限要素解析を行うための準備を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
室内実験は予定通り実施することができている.杭径や杭間隔を変化させた複数のケースを対象としたものであり,設計法の開発のために必要となる基礎データ(杭径や杭間隔に応じた地盤変位と土圧や地盤のすり抜けの関係)を取得できたことから,おおむね順調な進展であると判断している.さらに,2年目以降に実施する実験結果の再現解析についても,各種の解析法について試行的な基礎検討を行い,設計実務で標準的な2次元有限要素解析ではなく,3次元有限要素解析が適用性が高いという予備的判断・準備を行えている.
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今後の研究の推進方策 |
実験については,本研究で対象としている高剛性基礎と通常の鋼管杭基礎の応答の違いを検証し,応答の違いを反映した合理的な高剛性基礎の耐震設計法を確立するために,通常の鋼管杭を模擬した杭を用いた載荷実験を行う. 解析については,上記の実験結果を踏まえて,3次元有限要素解析などを実施して実験結果を精度よく再現できるパラメータの同定を行う.最終的には,実務で用いられる2次元解析で3次元効果を再現できることが求められることから,2次元解析についても予備的検討を行い,パラメータ設定法確立に向けた準備を行う.
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