本研究では、鋼床版の疲労対策技術である鋼繊維補強コンクリート(SFRC)舗装について、舗装とデッキプレート間の接着剤接合に着目し、温度と水による環境負荷が接合部の強度特性に及ぼす影響、及び劣化傾向を踏まえた接合部の性能評価法について検討を行った。最終年度には、SFRC舗装用の強度特性の異なる3種類のエポキシ樹脂系接着剤を対象に、接合部を模擬したコア抜き引張試験用の試験体に対して、実橋での環境条件を踏まえて、50℃の温水浸漬による12ヶ月間の劣化促進試験を実施した。また、同接着剤による引張せん断接着試験体及び圧縮試験体に対して、50℃の温水・アルカリ温水浸漬等による劣化促進試験を実施した。 強度特性の経時変化に関して、負荷初期には引張強度は接着剤の養生効果により増加するが、その後6ヶ月内に強度低下や破壊性状の変化(材料破壊から界面破壊への移行)が見られた。また、製作後7年以上経過したSFRC舗装暴露試験体の強度特性の試験結果との比較分析を行い、両者の強度及び破壊性状の変化傾向には定性的には整合する部分がみられること、接着剤の劣化特性の性能評価を行う上で、50℃温水浸漬の場合には6ヶ月程度の負荷期間が必要であることを確認した。さらに、接着剤の性状として、負荷期間とともに接着剤内に水が浸入し、樹脂の膨潤による強度・剛性の低下が生じること、コンクリートとの接合部への適用を想定したアルカリ温水浸漬では温水浸漬と比較してほとんど差が見られないことを確認した。以上、複数の性状の異なる接着剤によるSFRCと鋼材との接合部の劣化特性を明らかにするとともに、環境促進試験により接着剤接合部の強度特性を把握するうえでの試験条件・方法に関する留意点を示した。
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