これまでに,1)現在,整備されているトンネルおよび橋梁の点検データに加えてデータの取集・分析を行った.トンネル覆工コンクリートおよび橋梁点検データに関しては,新規に点検が行われたデータをデータベースに追加した.2)収集したデータは異なる劣化区分により評価されているものであるので,構造物ごとに統一した評価基準にキャリブレーションする必要があるために,同一尺度に変換するための理論開発を行った. さらに,3)劣化進行の不確定性を考慮した確率論に基づくモデルの構築を行った.本研究で用いる劣化予測モデルは,すでに開発された複合Poisson過程を駆動雑音とする確率微分方程式に定式化してモデル化するものであり,点検データに基づいて予測式の精度を検証した.4)本研究で対象とする大規模データ解析に対応するために,機械学習理論を援用する理論開発を行っている.具体的は,確率論手法に基づいたベイズ情報更新理論と機械学習理論の特長を生かして,カーネル関数による機械学習効率の向上が期待できる手法の開発を行った. 鉄道ネットワークを対象として,データを取得できた路線に対して確率微分方程式をもとに近未来の状態予測および管理値を超過する確率を算出することを行っている.また,都市域の劣化損傷事例は,希に発生するものであり,構造物群のポートフォリオに対して,相関を有するポアソン分布に従うモデルとして,確率論的最大損失を評価する手法の開発を行った.
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