研究課題/領域番号 |
18K04331
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
小野 潔 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (60324802)
|
研究分担者 |
穴見 健吾 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (30272678)
宮下 剛 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (20432099)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 橋梁用高性能鋼 / SBHS / 曲げ加工 / 残留応力 / シャルピー吸収エネルギー |
研究実績の概要 |
本研究では,シャルピー吸入エネルギーの大きい橋梁用高性能鋼SBHSを使用することで,矩形断面鋼部材の角溶接部をなくして曲げ加工部とした構造ディテールを実現するため,その構造の耐荷力評価法を提案する.鋼構造物の耐荷力には,残留応力が影響を与えることが知られている.本研究ではSBHSとしてSBHS400を主対象としているが,SBHS400を用いた通常の形式の角部を溶接構造とした溶接箱形断面鋼部材の残留応力に関する情報は非常に少ない.さらに,研究で対象とするSBHS400をもちいた角部を曲げ加工した溶接箱形断面鋼部材の残留応力に関する情報を少なくとも著者らは知らない.特に,角部を曲げ加工した溶接箱形断面鋼部材では溶接残留応力の他,曲げ加工による残留応力も発生するため,その曲げ加工部の残留応力に関する情報を得ることも非常に重要である.そこで,本年度は,通常の形式の角部を溶接構造とした溶接箱形断面鋼部材(通常部材),角部を曲げ加工した溶接箱形断面鋼部材(曲げ加工部材)を対象とした残留応力供試体を作成し,切断法により,その残留応力の測定を行った.その結果,SBHS400を用いた通常部材,曲げ加工部材の供試体のいずれの供試体についても,圧縮残留応力を降伏応力で無次元化した値は,既往のSM490の残留応力の測定結果と比較して,小さな値であることが判明した.また,曲げ加工部材の曲げ加工部では,外側で引張り残留応力が,内側では圧縮残留応力が発生しており,外側および内側を平均すると圧縮残留応力が生じていることが判明した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の研究でSBHS(SBHS400)の曲げ加工部のシャルピー吸収エネルギーに関する研究を実施した.その結果,SBHSは従来鋼と比較して,曲げ加工後であってもシャルピー吸収エネルギーが高く,SBHSを使用することで,矩形断面鋼部材の角溶接部をなくして曲げ加工部とした構造ディテールの実現可能性を示す貴重な知見が得られている.また,本科研費研究とは別の研究で,SBHS400およびSBH700を用いた角部を溶接構造とした溶接箱形断面鋼部材の軸圧縮試験,SBHS700を用いた角部を曲げ加工した溶接箱形断面鋼部材の軸圧縮試験および残留応力測定を実施している.本科研費研究で使用する解析手法による解析結果とその実験結果を比較し,解析手法の妥当性を確認しており,令和2年度に本格的に実施する解析の準備も実施した.令和2年度,SBHS400を用いた曲げ加工した溶接箱形断面鋼部材の軸圧縮試験,曲げ加工部を含む材料試験を実施する.令和2年度に実施する実験結果を活用し,さらに,今年度得られた残留応力に関す情報等を解析モデルに反映させることとで,曲げ加工した溶接箱形断面鋼部材の耐荷力に関する的確な情報を幅広く得えることができる.以上のことから,本科研費研究以外の研究成果を活用した関係で,研究内容は当初の予定と変更となっている部分もあるが,研究の目的ある,橋梁用高性能鋼SBHSの特性を活用して矩形断面鋼部材の角溶接部をなくして曲げ加工部とする構造ディテールの提案できることはほぼ確実である.よって,「(2)おおむね順調に進展している」と評価する.
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年度は,曲げ加工した溶接箱形断面鋼部材の耐荷力特性・座屈特性をより的確に把握するため,その軸圧縮試験を実施する.さらに,曲げ加工部の材料試験を実施し,その材料特性を把握する.それら軸圧縮試験結果,材料試験結果を使用して,さらなる高精度化をはかった解析手法により,曲げ加工した溶接箱形断面鋼部材の耐荷力特性に関する的確な情報を幅広く得る.そして,これまでの本科研費研究の成果,本科研費の研究以外の研究成果を活用して,橋梁用高性能鋼SBHSの特性を活用して矩形断面鋼部材の角溶接部をなくして曲げ加工部とする構造ディテールを提案する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
本科研費研究以外の研究成果を,本科研費研究に反映・活用することができた.そこで,より効率的に研究を進めるため,研究内容を一部変更した関係で,当初の計画から予算にずれが生じ,次年度使用が発生した.しかし,予算にずれが生じても当初の目的を達することには変更はない.むしろ,他の研究成果を活用することで,効率的に本科研費の研究が実施できている.次年度使用が発生した予算は,当初の令和2年度の予算と合わせて,実験供試体の製作等,より良い研究成果が得られるために使用する予定である.
|