研究課題/領域番号 |
18K04334
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
佐藤 忠信 神戸学院大学, 現代社会学部, 研究員 (00027294)
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研究分担者 |
木本 和志 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (30323827)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 地震動位相 / 位相差分過程 / フラクタル / レヴィフライト分布関数 / 非ガウス確率過程 / 分数レヴィフライトノイズ過程 / 相関性 / 位相の微分不可能性 |
研究実績の概要 |
構造工学の分野において、中心極限定理の成立しない確率現象を探索する。最も簡単な方法は、分散の定義できない確率密度関数を用いて、現象の確率分布特性を再検証することである。分散の定義できない確率分布は多数あるが、その中でも確率分布特性を規定するパラメータ数が多く、それらを適切に設定することにより、各種の確率分布特性を評価できるLevy-flight分布関数をターゲットとして、構造工学分野の各種不確定性問題を対象として、その確率分布がLevy-flight分布で表現できるような構造工学現象を探索した まず、多数の地震動記録の位相を円振動数の連続関数として求め、それをデータベース化した。位相を地震動のフーリエ変換の偏角として求めると、それは主値のみしか求められず位相のアンラップ操作が必要になる。この一般的な方法はないので、地震動位相を円振動数の連続関数として厳密に計算することを可能にした。 データベース化された地震動位相を線形遅れ部とそこからの変動部に分け、位相変動部の位相差分の確率分布特性を明確にした。この確率分布特性は正規分布に従わないことならびに長期記憶過程となっていることを明確にした上で、その特性をLevy-flight分布関数を用いて表現した。特に、位相過程を確率過程として考察する観点から、位相差分過程が中心極限定理に従わないことを明確にし、模擬法を確立した。 地震動の位相がなぜ中心極限定理の成立しない確率過程となるのかの本質を探るため、岩石材料中を透過する超音波の計測実験を実施し、透過波の位相の確率特性が地震動位相と同じになることを確認した。岩石試料中の不規則構造による透過波動の散乱現象が位相の確率特性に及ぼす影響を明確にし、地震動位相に見られる確率特性の物理的要因を解明した。超音波の透過実験は岡山大学で実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
位相差分の確率特性が円振動数間隔に依存することを発見した。位相が円振動数に関して相関性を有し長期記憶過程になることを赤明らかにし、位相を非整数ブラウン運動過程で模擬できることを明らかにした。その後、位相差分の確率特性が正規分布に従わないこと、確率過程として見る位相差分には中心極限定理の成立しないことが判明し、そのモデル化に関する努力を継続的におこない、その過程で、中心極限定理の成立しない確率過程を構築しなければならないことを明確にした。 非正規性を有する確率現象は、物理学や金融工学の分野で、今世紀になって注目され始めた事象であり、現象の存在を見出すことに勢力が注がれており、その数理的解釈にはまだ手が回らないというのが現状である。構造工学の分野でも、こうした現象の存在することに気付いている研究者が出始めているという段階であり、国内外において、定量的には無論のこと定性的な研究でさえもほとんど見当たらず、ここで得られて結果は、先駆的な研究と位置付けられる。
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今後の研究の推進方策 |
中心極限定理が成立せず、媒介変数に関して連続な確率過程を定義するために、Levy-flight分布に従う基本確率過程の定義法について議論する。ウイナー過程は基本確率過程の一つであるが、確率特性は正規分布であったので、分散を媒介変数の距離に比例するよう規定すればよかった。Levy-flight分布の分散は存在しないので、Levy-flightから独立同分布で生成された乱数列の和からなる確率変数の確率法則は定義できないが、Genedenkoが提案している一般化中心極限定理を用いればよい。Levy-flight分布に従う確率過程はこの一般化中心極限定理を満たすように構成できる。その上で、これをレヴィフライト過程と命名する。 今後の研究推進の主目的は、近代確率過程論の範疇を超える確率過程を構成するため、レヴィフライト増分過程を駆動項とする確率微分方程式や確率積分方程式の設定法を模索し、その理論を体系化するのに必要となる基本定理を導出した上で、構造工学における破壊確率の計算や、ライフサイクルコストの計算へ得られた成果を適用する。
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