一般に、鉄筋コンクリート棒部材(はりや柱)のせん断破壊形式としては、①斜め引張破壊、②せん断圧縮破壊、③腹部コンクリートの圧縮破壊、の3通りが考えられる。本研究における実験結果では、総試験体数7体のうち1体が斜め引張破壊、残りの6体がせん断圧縮破壊であった。この結果を踏まえて、提案補強方法によって補強された鉄筋コンクリート棒部材のせん断耐力の算定方法を提案した。 標準示方書および道路橋示方書ともに、斜め引張破壊に対する耐力は、いずれもせん断補強鉄筋が受け持つせん断耐力とコンクリートが受け持つせん断耐力の和として表している。本研究においては、せん断補強用CFG板縦筋によって受け持たれるせん断耐力Vguは、一般的なトラス理論によるせん断耐力の算定式を基にした式で表されるものとした。その結果、斜め引張破壊に関しては、両示方書に準ずる場合、本研究で提案する式により補強用CFG板縦筋によって受け持たれるせん断耐力を算定すれば安全側で評価できることがわかった。また、せん断圧縮破壊耐力は標準示方書の式により評価が可能であることが確認できた。腹部コンクリートの圧縮破壊に関しては、対象とする破壊形式の実験結果がないことから評価方法は提案していない。 これらの研究成果は、2編の査読付論文として発表したほか、土木学会全国大会において口頭発表した。 本研究では、補強用CFG板縦筋が負担するせん断耐力Vguを算定する式において、定着用炭素繊維でCFG板の格子を結束することによる、補強用CFG板の格子の強度の低下あるいは結束による応力集中等による定着用炭素繊維束の強度低下を、補強用CFG板の強度の有効係数Kgの形で評価式に取り入れようとしているが、各実験において格子板の結束部あるいは定着部において破壊が生じていないことから、定着用炭素繊維束の強度低下を評価する有効係数Kgの値を評価するには至らなかった。
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