研究課題/領域番号 |
18K04338
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研究機関 | 神戸市立工業高等専門学校 |
研究代表者 |
上中 宏二郎 神戸市立工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (70332046)
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研究分担者 |
水越 睦視 神戸市立工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (10455165)
酒造 敏廣 神戸市立工業高等専門学校, その他部局等, 特任教授 (90137175) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 二重鋼管・コンクリート合成部材 / コンクリート充填鋼管部材 / 軽量コンクリート2種 / 内径・外形比 / 径厚比 / 終局強度 |
研究実績の概要 |
二重鋼管・コンクリート合成(CFDST)部材とは,直径の異なる二種類の鋼管を同心円上に配置して,その両者の間のみにコンクリートを充填した構造部材を指す。このような形状により,従来のコンクリート充填鋼管(CFT)部材と比較して,内鋼管内部が空洞となるため軽量となる利点を有する。また,CFDST部材を橋脚に用いれば,CFTと比較して橋脚基礎部の負荷の低下,および地震時の慣性力の低下が期待できる。 一方,軽量コンクリート2種(LC2)は粗骨材,細骨材ともに軽量な膨張頁岩を用いており,粗骨材のみを軽量骨材にした軽量コンクリート1種(LC1)よりも軽くなる。また,LC2は,従来のコンクリートと比較して20%程度の軽量化が可能である.しかしながら,軽量骨材の曲げ,引張,せん断強度は普通コンクリートと比較して低くなることが挙げられる。 そこで,本研究では橋脚への適用を目的とした大きな径厚比(Do/ to)を有するLC2を充填CFDST(L-CFDST)の基礎的検討の把握を目的とした実験的検討を行った。LC2は鋼管によって,せん断,および引張強度等の補強,ならびに鋼管は軽量コンクリートによって座屈が防止できるという利点がある。さらに,LC2を用いることにより,普通コンクリートを用いたCFDSTよりも軽量化が期待できる。 本研究では,まず,CFDSTにLC2を充填したCFDST(以下,L-CFDST)短柱部材の基本特性の把握を目的とした中心圧縮特性に関する基礎的検討を行った.実験変数は,外鋼管の径厚比(Do/to)ならびに内鋼管・外鋼管幅比である。この両者が破壊形式,終局強度,変形特性に与える影響について調べることを目的とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
鋼管供試体の設計に少し時間を費やしたが,心配された鋼管の溶接割れも見られず,現在のところ,160の大きな外鋼管の径厚比を有するL-CFDSTの漸増載荷方式による中心圧縮実験を順調に行えてきている。得られた結果より,L-CFDSTの内径・外形比(Di/ Do)が中心圧縮特性に与える影響が大きいことが分かってきている。 具体的には,実験で得られた最大強度とLC2と鋼材のそれぞれの累加強度の比は,内径・外形比が大きくなると低下することがわかった。また,L-CFDSTの中心圧縮強度は内径・外形比が0.5以下までなら,累加強度の70%以上が確保できることがわかった。さらに,得られた破壊形式は内径・外形比が0.5以下なら,充填コンクリートのせん断破壊に伴う鋼管の座屈であった。これは,従来のコンクリート充填鋼管短柱の破壊形式と同じである。しかしながら,最も内径が大きいもの(Di/ Do=0.7)の場合は,部材の断面積が小さくなるため,供試体端部に象の足型(Elephant-foot)の座屈が見られた。さらに,内径・外形比が大きくなると変形性能も低下した。せん断破壊が見られなかったElephant-footの破壊を呈した内径・外形比が0.7のものは,端部で壊れてしまって載荷断面積が変化したため,強度の低下後にわずかに上昇する特性が見られ,変形が進行した。最後に,全ての供試体において,最大中心圧縮強度を発揮した後,変形が2%進行しても急激な中心圧縮力の低下は見られず,鋼材とLC2の累加強度の50%以上を保持した。
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今後の研究の推進方策 |
現在のところ,比較的大きな径厚比の中心圧縮実験を順調に行ってきており,必要としている基礎的データを難なく測定できている。今後は,橋脚への適用のみならず,一般の柱部材に適用できるような径厚比が70程度のL-CFDSTの中心圧縮特性に関する実験を行う予定である。 具体的には,本実験で得られた結果から,L-CFDST特有の実験変数である内径・外形比ならびにコンクリート充填部材の径厚比が中心圧縮特性に与える影響について,終局強度,破壊形式,ならびに変形特性から考察する。さらに,鋼管に貼付したひずみゲージのデータを用いて弾塑性応力計算を行い,LC2のダイレイタンシーの影響が鋼管の弾塑性応力状態に与える影響について考察し,L-CFDSTのLC2と鋼管の材料特性を用いた中心圧縮強度の算定手法の一手法を提案し,定量的な把握を試みる。なお,充填材のLC2の骨材の強度自体は小さいので,鋼管厚が厚くなると拘束効果が上昇するため,粗骨材が割れてしまう可能性が十分に考えられる。したがって,鋼管を切断して,中のLC2の粗骨材の状況を目視で確認したい。 最後に,L-CFDSTの研究は代表者,分担者が知る範囲では国内外において見られない。したがって,他の研究者が行ったL-CFDSTのデータの比較,考察は困難と思われ,現在,日本建築学会で整備されている普通コンクリート充填鋼管部材(CFT)に準じた終局強度強度算定方法にとなると予想される。
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次年度使用額が生じた理由 |
まず,実験供試体の主である1.0mm, 1.6mm,および 2.3mmの三種類の薄鋼板を円形状に形成し,円形鋼管の溶接加工による供試体製作費用が,予想価格よりもわずか下回った。次年度には,この少し余った予算を,実験供試体(薄板鋼板加工),ひずみゲージなどの消耗品の費用,または近距離の旅費の一部に充てる予定である。 次に,本年度の物品購入の主たるものは,昨年度同様に鋼管製作・加工が中心となる。次の実験実施に向けて直接経費の合計500,000円を物品購入費用として,主に鋼管購入に充てる予定である。また,学会参加などの旅費への利用も考えられる。 最後に,現在のところ,備品の購入,ならびに人件費・謝金への使用を考えてはいない。
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