研究課題/領域番号 |
18K04339
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研究機関 | 国立研究開発法人防災科学技術研究所 |
研究代表者 |
佐藤 栄児 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 地震減災実験研究部門, 主任研究員 (60343761)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 鉛直地震動 / 鉛直免震機構 / セミアクティブ免震 / 回転慣性ダンパー |
研究実績の概要 |
近年1Gを超える地震動が観測され、構造物への影響も問題視されつつある。そこで本研究では、その鉛直動の影響低減をめざし、鉛直免震に関して長周期化とセミアクティブ技術を用いた鉛直免震機構を提案、検証する。 まず地震動の鉛直動について、過去の地震記録の収集と地震動の分析を行った。過去の地震観測記録では、1Gを超える鉛直動として、2003年宮城県沖の地震、2004年新潟県中越地震、2007年新潟県中越沖地震、2008年岩手・宮城内陸地震、2016年熊本地震(前震)などが記録されている。一方、構造物に大きな影響を与えた1995年兵庫県南部地震では300cm/s^2程度となっている。今後これらの鉛直地震動の特性と被害状況のさらなる分析と実験的検証を実施する。 また、これらの鉛直動による影響を低減するため、セミアクティブ技術を用いた鉛直免震機構に関して、実験的検証を行うための鉛直免震台の基本検討を行った。本鉛直免震台は、上部構造の質量を支持し、かつその支持剛性をより柔らかく実現させるため、リンク機構と負剛性の効果を用いた負ばねを組み合わせた鉛直免震装置を採用することとした。この装置において負ばねの設置状態を調整することで、免震仕様の変更が複数に設定でき、これにより実験的検証時において、様々な条件下での評価が可能なものとしている。また、本鉛直免震台の鉛直加振による実験的検証を行うため、既存加振装置の必要な改修を行った。 さらに、鉛直免震機構の免震周期を長周期化しつつ、かつ減衰が可変可能な回転慣性と磁気を利用したセミアクティブダンパーの基本検討を行った。本セミアクティブダンパーは、実用化を考慮し回転慣性を用いた回転慣性マスダンパーと磁気により減衰力を可変させるダンパーを一体としたものを考案し、小型化および低コスト化をめざした。 次年度以降は、各装置の製作と実験的検証に着手する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度において、当初の計画では、検証用鉛直免震台装置の製作等を行うこととしていたが、装置の設計検討がやや遅れ、装置の製作が当初計画より遅れることとなった。その理由として、検証用鉛直免震台装置を鉛直加振させる既存の加振装置を、鉛直加振が可能なように改修させることが必要となり、その改修後、加振性能を見極めたうえで検証用鉛直免震台の設計を行ったため、やや時間を要することとなったためである。ただし、次年度早々に検証用鉛直免震台装置の製作等を行うこととし、研究全体の実施期間としての遅れはほぼないと想定している。 また一方、回転慣性マスダンパーおよびセミアクティブダンパーの検討および数値モデルの検討を当初計画より早めて実施しており、全体としての遅れはない。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、可変減衰が可能な回転慣性マスダンパーによるセミアクティブ制御を用いた免震機構の引き続きの検討とその結果に応じた回転慣性マスダンパー等の設計製作を行う。さらに単体での装置の加振実験を実施し、各種データおよび技術的知見の取得を行っていく。 これらの結果から、鉛直免震構造に関する数値解析モデルの検討を推進し、当初の目的を達成させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度において、検証用鉛直免震台装置の製作等を行うこととしていたが、装置の設計検討がやや遅れ、装置の製作が当初計画より遅れることとなった。そのため、次年度以降に検証用鉛直免震台装置の製作を行うこととなり、次年度以降への使用額が生じることとなった。ただし、次年度早々に検証用鉛直免震台装置の製作等を行うこととしている。
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