研究課題/領域番号 |
18K04340
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研究機関 | 国立研究開発法人土木研究所 |
研究代表者 |
中尾 尚史 国立研究開発法人土木研究所, 土木研究所(構造物メンテナンス研究センター), 研究員 (50514171)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 津波 / 橋梁 / アンカーボルト / 耐力 |
研究実績の概要 |
平成30年度は,津波を受ける橋の流出判定手法を検討するために,以下を実施した. ・津波により橋に作用する力の検討:津波による橋の挙動を検討するために水路実験を実施した.実験水路は,幅400mm長さ6000mの2次元水路(本実験装置は,ゲート開放方式により津波を発生)を用いて実験を行った.平成30年度は4主桁断面模型(1/100スケール)を実験の対象とした.実験は津波高を変化させることで橋梁模型に作用する力(津波作用力)を計測した.同時に模型周辺の流れの様子を撮影した.実験の結果,津波高と津波作用力の関係や津波作用力の発生メカニズムを把握することができた. ・アンカーボルトの耐力に関する検討:津波に対する橋の抵抗力を明らかにするために,平成30年度は支承を構成する部品の1つであるアンカーボルトに着目し,アンカーボルトの耐力を静的載荷実験により検討した.アンカーボルトの実験供試体として,SS400材(アンカーボルト径は32φ,38φ,50φ.各3~5本)を用いた.実験施設の反力床に設けられている貫通穴を利用し,貫通穴に実験供試体を差し込み,載荷治具を用いて実験供試体が破断するまで水平方向に載荷した.また,貫通穴と実験供試体との間にスリーブ管(S45C)を用いた.実験では,実験①(純せん断載荷させた場合),実験②(載荷高さを125mmから750mmに変化させて載荷し,せん断と引張を作用させた場合.32φのみ実施)を実施し,アンカーボルトの最大荷重とそのばらつきについて検討を行った.実験①の結果,実験を行ったアンカーボルト径の最大荷重のばらつきは小さいことがわかった. また,実験で得られた最大荷重は,現在の道路橋示方書で記載されているせん断耐力の設計式(引張強さ/ルート3)に比べて,大きいこともわかった.実験②の結果,載荷高を変えることで最大荷重が徐々に低下することがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水路実験により,津波高と津波作用力の関係および津波作用力の発生メカニズムを把握することができた.これにより得られたデータを基本データとして,津波作用力を軽減させる装置を設置した場合など,実験条件を変化させた結果との比較が可能になる.また,アンカーボルトの載荷実験により,アンカーボルトの耐力や耐力ばらつきを把握することができた.これにより,得られた実験結果を用いて,解析の妥当性を検証したうえで,支承部の解析をすることが可能になる.したがって本研究は,おおむね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
以下の方針で研究を実施予定である ・水路実験:初期水深や橋の断面形状を変化させた場合における橋の挙動,および津波作用力を軽減させる装置(フェアリング,整流板)を設置した場合の橋の挙動について,水路実験や解析により検討を行う. ・橋の抵抗力の検討:支承を構成する他の部品およびダンパーやその取付け部の耐力にについて,解析により検討を行う. ・損傷シナリオをデザインする方法の検討:過去の損傷事例から,橋における致命的な損傷(橋の機能喪失)について分析を行い,さらに津波により致命的な損傷に至らない方にする方法(損傷シナリオをデザインする方法)について,解析により検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度に製作した橋梁模型が,予定していた金額より安く製作することができたため,次年度使用額で示した残金が生じた.次年度では,残金分は模型製作費に充てる予定である.
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