研究課題/領域番号 |
18K04342
|
研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
荻野 俊寛 秋田大学, 理工学研究科, 准教授 (80312693)
|
研究分担者 |
田口 岳志 秋田大学, 理工学研究科, 助教 (00452839)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | セルフモニタリング / ベンダーエレメント / 伝達関数 |
研究実績の概要 |
全体系の伝達関数から送・受信ベンダーエレメント(BE)の伝達関数を取り除くことで,BE試験の到達時間の測定精度を向上させるという,申請者の提案した方法を実現するためには,BEの伝達関数が実験的に求められなければならない。2019年度は送信BEの伝達関数を求めるために,セルフモニタリング(SM)BEを利用して,入力電圧に対する実際のBEの変形,そしてBEの変形に対して発生するSMのフィードバック電圧,の関係について詳細に調べた.その結果,以下のような知見を得た. レーザー変位計による多点変位測定によってSMBEの面的な振動の様子を明らかにした。変位の挙動は入力信号波形と一致しなかった。これは従来の仮定と大きく異なる。 この様子から,一次の固有周波数のときは,固定端を支点とした片持ち板の一次モード振動に近い振動であるのに対し,二次の固有周波数のときは幅方向の曲げ振動が卓越することが示された。 SMによるフィードバック信号は,入力信号とは一致しない。フィードバック信号はBEの変形を反映するので,基本的には先端変位と近い波形となる。ただし,フィードバック信号と先端変位の波形はいくつかの点で異なる。一つ目の違いは,フィードバック信号には入力信号がリークして混入している点である。簡易的な補正によって,入力信号の混入度は周波数レンジ,拘束条件とは独立しており,おおよそ一定であることが示された。 もう一つの違いは,フィードバック信号は二次の固有周波数に近づくほど,実際の先端変位の振幅よりも増幅される点である。これは測定される電圧は 長さ方向の変形に加え,二次の固有周波数の時に卓越するSMBEの幅方向の曲げ変形が合成されてされるためである。 これらの相違点がクリアーされることによって,先端変位と等価なフィードバック信号を得られるものと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,申請者が過去に提案した,BE試験装置全体系の伝達関数から送・受信ベンダーエレメント(BE)の伝達関数を取り除くことで,BE試験の到達時間の測定精度を向上させる,という実験方法を確立することである.2019年度は,SMBEを用い,その変形の様子をレーザー変位計で面的に捕らえることで,そのために必要なBEの伝達関数の評価が実現可能であるという見通しを立てることができた.また,副次的にBEが想定していたよりもはるかに複雑なモードで振動することもわかった.これはそれまでのBEの挙動についての常識を覆すもので,大きな発見であった.
|
今後の研究の推進方策 |
基本的には当初の計画通り,送・受信BEの伝達関数を実験的に求めることに注力する.2019年度の結果からSMBEのフィードバック信号が伝達関数として使用できる可能性が示された.しかしながら下記に示すいくつかの課題も見えた. ・フィードバック信号は二次の固有周波数に近づくほど,実際の先端変位の振幅よりも増幅される ・フィードバック信号には入力信号がリークして混入している 次年度はこれらの課題に取り組む.増幅の原因は面的な測定の結果,幅方向の曲げ変形が卓越するためであることがわかった。そこで,幅方向の曲げ変形を抑制する方法について検討する.また,電圧のリークについて,入力信号の混入度は周波数レンジ,拘束条件とは独立しており,おおよそ一定であることが示された。そのため,この結果を踏まえて電圧リークのモデルの提示を提示し,フィードバック信号の補正法を検討する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
昨年度実施したレーザー変位計による実験の結果,実験条件によっては別のレーザーヘッドが必要となることがわかった。昨年末からヘッドの選定を行ってきたが,2019年度の購入には間に合わなかった。今年度,新たにヘッドを購入する予算に充てる予定。
|