研究課題/領域番号 |
18K04345
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
江種 伸之 和歌山大学, システム工学部, 教授 (00283961)
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研究分担者 |
田内 裕人 和歌山大学, システム工学部, 助教 (60780476)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 豪雨災害 / 土砂災害 / 7.18水害 / 有田川水害 / 紀伊半島大水害 / GIS / 地形立地解析 / 現地調査 |
研究実績の概要 |
2年目の研究では,7.18水害と紀伊半島大水害を対象にGISを使った地形立地解析を実施した.7.18水害では,研究1年目に行った和歌山県北部に加えて南部も対象に,紀伊半島大水害では,和歌山県南部を対象に,土砂災害の素因(主に地形)について考察した.さらに,両水害で大規模な斜面崩壊が生じた現場で調査を行った. 地形立地解析の結果,7.18水害においては,崩壊地における地質は北部では清水付加体,南部では熊野酸性岩類の流紋岩が多くの割合を占めていた.傾斜角は北部で30度以上,南部で35度以上の場合に崩壊が発生しやすい傾向がみられた.傾斜方向は,北部,南部ともに南東・南・南西向きが多かった.起伏量は北部,南部ともに35m以上の場合が多くの割合を占めた.斜面形状は,北部で凸形,谷型,南部においては凸形,尾根型,谷型が多くの割合を占めた.植生は北部,南部ともに植林地が大部分を占めていた. 一方,紀伊半島大水害においては,崩壊地の素因特性は,地質は火成岩体,傾斜角は20度以上40度未満,傾斜方向は東・南東・南向き,起伏量は10m以上25m未満,斜面形状は凸形形状,谷型形状,植生は植林地であることがわかった.そして,地質別に見ると,付加体の崩壊地は傾斜方向が南寄りよりも,北寄りの方が多く存在し,火成岩体や堆積岩体の崩壊とは,傾斜方向の素因特性が異なることが明らかとなった. 両水害で斜面崩壊した和歌山県旧花園村の横谷川流域において,崩壊の素因や今後崩壊を起こす危険性を調べるため,現地調査を行った.この崩壊地では,7.18水害の崩壊の規模が紀伊半島大水害のものよりもはるかに大きく,7.18水害の崩壊土砂の崩れ残りの土砂が紀伊半島大水害で崩壊していた.また,紀伊半島大水害の崩壊源頭部の上部には,未だに7.18水害の崩れ残りが大量に残り,今後の大雨により再度崩壊する可能性があることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
紀伊半島はこれまでに何度も豪雨による土砂災害に見舞われてきた.本研究では新旧3つの水害を対象に,土砂災害の再現性に注目して,紀伊半島で発生する土砂災害の特徴を明らかにすることを目的とする. 研究2年目の2019年度は,7.18水害(有田川水害)と紀伊半島大水害を対象として研究を実施した.7.18水害は1953年7月中旬に活発化した梅雨前線が和歌山県中・ 北部に停滞したことで発生した災害である.一方,紀伊半島大水害は2011年9月初旬に四国から中国地方を通過した台風第12号により引き起こされた災害である.7.18水害に関しては,1953年および1955年に和歌山県北部と南部の一部で空中写真の撮影が行われており,災害直後の空中写真が現存している.また,紀伊半島大水害に関しては災害直後に撮影されたオルソ化済みの空中写真が存在している. そこで,2019年度の研究では,これら空中写真を利用して,7.18水害は主に2018年度に解析した和歌山県北部地域に南部地域を含めて,紀伊半島大水害も和歌山県南部地域を対象に,できるだけ広範囲で斜面崩壊地(以下,崩壊地)を抽出し,地質や地形などの特徴を分析することで,7.18水害および紀伊半島大水害で発生した土砂災害の素因(主に地形)について考察し,明らかにした.収集した空中写真をGISを使って分析した結果,それぞれに関する特徴を明らかにすることができた. また,7.18水害および紀伊半島大水害で斜面崩壊が生じた横谷川流域で現地調査を実施し,土砂災害の再現性に関する有意義な成果を得ることができた. この分析手法および結果は,研究最終年度の2020年度に行う十津川水害や紀伊半島大水害(和歌山県北部地域)に適用できるものであり,研究2年目の研究成果としてはおおむね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度(2020年度)は,十津川水害と紀伊半島大水害を対象として研究2年目までと同様の研究を行うと同時に,3つの水害を比較して,土砂災害の再現性に注目した分析を行う. (1)資料調査:十津川水害を対象に,過去の調査報告書や書籍,地質図や古地図などの紙媒体の資料を可能な限り収集し,土砂災害の概要や場所(位置情報)を確認するとともに,崩壊地の地形・地質などの地理的特徴を整理する. (2)現場調査:十津川水害,7.18水害(有田川水害),および紀伊半島大水害の新旧3つの水害で発生した土砂災害現場を調査する.紀伊半島大水害に関しては,これまでの研究の未調査地を中心に行う.7.18水害(有田川水害)に関しては,災害直後に空中写真が撮影されているため 崩壊地の把握が比較的容易である.そこで,空中写真を利用して,正確な位置を把握する.現場調査では,断層,破砕帯,流れ盤,地すべり地形などの地形・地質状況の確認,地形測量,ドローンによる空中写真撮影などを行う.ただし,十津川水害の場合には 崩壊跡が明確に残っていない場所が多いと推察される.そこで,上記の資料調査で収集した報告書や書籍に記載されている情報を使い,可能な限り正確な地点で調査する. (3)GIS空間分析:資料調査や現場調査に基づいてデータベース化した地理情報を使い, 主に十津川水害と紀伊半島大水害(和歌山県北部地域)を対象に,災害毎に地形(傾斜角,方位など),地質(断層,流れ盤など),地盤(地下水位など),植生(植林地など)などの素因と誘因(降水量分布など)を分析する.また,新旧水害で共に崩壊が生じた特異地点を抽出し,その特徴を整理する. 最終的には,新旧3つの歴史水害の情報を用いて,紀伊半島南部を形成する付加体および火成岩体で発生する土砂災害の特徴(素因と誘因)の観点からとりまとめる.
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