研究課題/領域番号 |
18K04348
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
末次 大輔 宮崎大学, 工学部, 教授 (30423619)
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研究分担者 |
日野 剛徳 佐賀大学, 理工学部, 教授 (20295033)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | セメント改良地盤 / 劣化 / 耐久性 / 海水 |
研究実績の概要 |
セメントならびに石灰処理土はカルシウムの溶脱に伴い徐々に軟弱化する。軟弱化の速さは地下水中(海水中)のマグネシウム濃度に依存する。沿岸部の軟弱粘土地盤地帯で施工された既設のセメント処理地盤の長期的な安定性の評価方法は確立されておらず,軟弱化による力学的不安定化メカニズムの解明が必要である。本研究では,セメント混合処理土と周辺地盤との相互作用に着目することにより,処理土-粘土間の海水の浸透特性ならびに処理土-粘土間の軟弱化に伴う力学的相互作用の変化を明らかにする。 平成30年度は,セメント処理土の海水の浸透時における透水特性ならびに劣化特性の経時的変化と,海水浸透条件下での海水濃度と劣化速度の関係を調べる室内実験を行った。本研究では海水による劣化を模擬しなおかつ劣化促進が可能な塩化マグネシウム水溶液を用いた。まず,MgCl2水溶液通水時の透水量の計測と浸出水のサンプリングが可能な定水位柔壁カラム浸透試験装置を製作した。有明粘土に所定量のセメントを混合した固化処理土を作製し,濃度の異なる4種類のMgCl2水溶液を用いて浸透実験を行った。MgCl2濃度が高いときほど劣化進行が早くなることを確認した。MgCl2濃度が低い条件では徐々に透水性が低下していくが,MgCl2濃度が高い条件では,時点から透水性が高まる現象が観察された。この現象は,透水性の経時変化はセメント処理土中を海水が浸透する過程で,処理土中でセメント水和物の溶解やMgOH2の析出と溶解に起因すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度では,セメント処理土において人工海水の浸透特性ならびに劣化特性に関する室内実験を行った。人工海水による透水と浸出水を採取できる定水位柔壁カラム浸透試験装置を製作し,セメント混合量の異なる処理土供試体を用いて模擬海水の浸透試験を行った。その結果,MgCl2濃度が高い場合ほど劣化進行が早くなることを確認した。この結果を基に,処理土―粘土層における力学的相互作用の変化を調べる実験条件を検討している。その他,今年度および来年度に実施する処理土―粘土層における力学的相互作用を調べる実験装置を試作した。平成30年度に実施した内容は,当初計画どおり進んでいるため,おおむね順調に進展している,と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,海水がセメント処理土中を流れることによる透水性の変化の原因を明らかにする。そして,処理土―粘土間の浸透特性を明らかにするための浸透試験を実施し,海水浸透による処理土の劣化に及ぼす粘土層の影響について検討する。そして,処理土―粘土間の劣化・軟弱化による力学的相互作用を調べるための予備的な検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の所属が年度途中で変わることとなり,実験装置の移設など異動にかかる作業のため一時的に研究を中止する必要があったことと,経費を節約して使用したことによる。次年度以降に実施する力学試験において試作装置の改良等に活用する。
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