研究課題/領域番号 |
18K04354
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
深川 良一 立命館大学, 理工学部, 教授 (20127129)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 拡翼アンカー / 鉄筋挿入工 / 盛土地盤補強 / 引き抜き抵抗 |
研究実績の概要 |
アースアンカー工や鉄筋挿入工をはじめとする地中アンカー工は,盛土法面や既設擁壁の補強に広く利用されている。これらは,地中のグラウトと周面地盤の摩擦力により造成する定着部と地表付近の構造物または地山を,鉄筋等の高強度の引張材で連結させ,引張力を利用して安定させるシステムである。しかし、この工法は経年的に地山との連結部が緩み、所定の引っ張り強度を発揮しなくなることが知られている。そこで、本研究ではアンカーの先端部が翼型に拡張する拡翼アンカーを提案している。拡翼アンカーは物理的に地山との一体化を果たすため、経年的な引き抜き抵抗低下がみられないという特徴を有する。 本研究では,構造解析により鉄筋挿入工の改良工法としての拡翼アンカーの最適な構造を明らかにし,具体的な状況を想定し鉄筋挿入工と拡翼アンカー工の許容引抜き抵抗力の比較を行った。また,鉄筋挿入工の設計基準の中でも,許容引抜抵抗力の算出の部分に着眼し,鉄筋挿入工の許容引抜抵抗力と拡翼アンカーの許容引抜抵抗力の比較を行い,既存の鉄筋挿入工の許容引抜抵抗力の算出式の中に拡翼アンカー独自の基準を組み込めるかの検証を行った。最適な拡翼アンカーの形式ははめ込み型と呼ぶもので、構造的に強く、また現場でも組み立てやすいという特徴を有するものとなった。また、具体的な引き抜き抵抗式としては、勝見・西原(土木学会論文集、第276号、1978年)により提案されたモデルを拡張したもので、拡翼アンカーの引き抜き抵抗を予測することが可能であることを、深さ50-100㎝程度ではあるが、現地盤での拡翼アンカー引き抜き試験を実施することによって明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定では2018年度までに①拡翼部の最適構造の決定、②拡翼アンカーの引き抜き抵抗のモデル化を達成することとしていたが、「研究実績の概要」のところで述べたように、ほぼこの目的を達成している。ただ、実際の地盤を対象とした拡翼アンカー引き抜き試験の実施例がまだ十分ではないため、(2)の区分を選択している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は当初の予定通り以下のような項目について研究を進める予定である。 (1)実際の地盤を対象とした拡翼アンカー引き抜き試験の実施:【現在までの進捗状況】のところで述べたように、実際の地盤を対象とした拡翼アンカー引き抜き試験の実施数が不十分であった。ここでは、実際の地盤における実施例をさらに増やしていく。昨年度の実績では、現地におけるボーリングに若干の難があったため、今年度は日鉄住金建材のオペレータの支援を得ながら、さらに深い地盤での実施例も増やしていく。 (2)引き抜き抵抗に及ぼす降雨条件および振動条件の影響把握:ここでは、人工降雨装置(現有;降雨面積1.5m×1.5m)の下、あるいは振動台(現有)上にモデル土槽を設置し、降雨後、あるいは振動後に拡翼アンカーおよび比較のための従来型アンカーによる引き抜き抵抗試験を実施し、さらに両アンカーの盛土全体の安定性向上に対する寄与度を評価する。具体的には、モデル土槽中に幅1m、高さ70㎝、斜面傾斜角40度程度のモデル斜面を設置する。モデル斜面では明確な基盤部がある場合とない場合を想定し、前者では相対密度90%で締め固めた基盤部の上に相対密度60%程度の厚さ10㎝の表層部を設定する。後者の場合はすべて相対密度60%で斜面を作成する。拡翼アンカーおよび従来型アンカーは実物の1/10サイズの模型を製作し、斜面上にセットする。
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