2020年度は、モデル地盤を作成し、従来型アンカーおよび本研究で提案している拡翼アンカーに対する水平方向引っ張り実験を実施した。モデル地盤は、内寸30×30×30㎝の容量を有する土槽において真砂土を締固め度90%に設定して作成した。試験条件としては、地盤材料の含水比を3種類:10、15、20%、締固め度を3種類:50、70、90%、アンカー先端部の埋設深さを3種類:10、15、20㎝、合計3×3×3=27通りを設定した。 主要な成果は以下の通りである。①昨年度実施した鉛直方向の引き抜き抵抗力との関係でいえば、引き抜き抵抗が引き抜き距離の増加に対して明瞭なピーク値を示すのに対して、水平方向の引っ張り抵抗は緩やかに増大し、明瞭なピークが得られないケースが多かった。②含水比が低くかつ締固め度が高いと拡翼アンカーの引っ張り抵抗が大きくなる傾向を示したが、高含水比になるほど、締固め度が低下するほど、従来型アンカーと拡翼アンカーの差は縮まる傾向を示した。③拡翼アンカーの引き抜き抵抗は、与えられた条件下では引っ張り抵抗のおよそ倍の値を示した。 以上の成果を踏まえると、盛土斜面補強の目的で設置された拡翼アンカーは従来型アンカーに比べて補強効果が高まることが示されたと判断できる。2020年度に従来型アンカーと拡翼アンカーを設置したモデル斜面を作成し、振動条件下での応答を振動台を用いた室内モデル試験により検証する予定であったが、コロナウィルス感染の影響で実施できなかったことは残念であった。 研究期間全体を通しては、拡翼アンカーの基本的特性を明らかにでき、また現地での適用に資するような拡翼アンカーの形状および拡翼方法を提案するに至ったことは本研究の重要な成果であると判断している。
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