盛土や河川堤防,アースダムといった陸上の地盤構造物は,「締固め」によって造られる.近年になって,不飽和土の力学体系が整理され,「締固め」の力学的な意義を不飽和状態の地盤材料の非排水条件下での圧縮・除荷過程と位置付けることで,「締固め」メカニズムが解明されようとしている.しかしながら,材料の締固め特性を同定する締固め試験と,現場の実施工の間には依然大きな隔たりがある.その原因は,試験装置における拘束条件,スケール効果だけでなく,締固め荷重の載荷方法が大きく異なることにある.室内試験が,ランマー落下による突固めや,一次元的な締固めであるのに対して,実施工では大型重機を用いた転圧が行われることが多い.今年度は,昨年度製作した転圧模型試験機を用いて,転圧によって生じる地盤内部の締固め度の分布特性について詳細に検討した.試験機は,転圧ローラーに接する模型土槽を水平移動させることで転圧を表現している.実際の転圧においては誘導輪による転圧に相当し,転圧時のローラー前面の試料押し出しが顕著になる.この試料押し出しが,地盤への転圧荷重の損失につながるとして,試料押し出しに影響を及ぼす要因について検討した.その結果,転圧荷重が大きい程,転圧速度が遅い程,転圧面の圧縮量が大きくなり,結果的に試料の押し出しを助長することが分かった.また,この試料の押し出しだけでなく,駆動輪で生じる空転すべりを,それぞれ転圧面へのせん断力作用であるとして,土/水/空気連成解析による転圧シミュレーションを実施した.このせん断力の作用方向によって締固め度分布は大きく異なり,空転すべりを模擬した進行方向と逆にせん断力を作用させる転圧の方が,効率的な締固めが行えることが分かった.
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