研究課題/領域番号 |
18K04356
|
研究機関 | 八戸工業高等専門学校 |
研究代表者 |
清原 雄康 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (20369911)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 粒子破砕 / 泥流状崩壊 / 火山灰質土 / しらす / 液状化 |
研究実績の概要 |
施工後14年経過した野外盛土試験では,土壌水分,サクションの計測を継続した。水分特性曲線の履歴を求め,昨年度に引き続き保水性の変化などを観察した。施工当初と比較して保水性が低下しているのが観察され,間隙径が広がっていることが推察された。この挙動については令和元年度地盤工学研究発表会にて報告した。 三軸セル室を用いて柔壁型透水試験が行える配管を施した装置を用いて,細粒分が抜けたしらす土にベントナイトミルクを注入させ,密実化を図る実験も行った。さらに,通水により密実化させた供試体の三軸圧縮試験も実施し,強度変化を調べた。 火山灰質土のしらすは多孔質で破砕性に富んでおり,その圧縮強度,圧縮特性,土粒子単体の体積弾性係数を定量的に把握するための一軸圧縮試験も行った。軽石を円筒形に整形し側方への変形を観察しながら,最大強度や体積弾性係数を求めたところ,最大強度はコンクリートの1/3~1/50であった。圧縮性に富み,破壊前で軸方向圧縮に対して側方への膨張は観察されなかった。ヤング率Eは30~1100MPa,体積弾性係数KSは10~370MPaと,普通砂(石)の1/100~1/3600倍であった。液状化や側方流動で問題となる過剰間隙水圧の上昇については,Ksが小さい方が上昇しにくくなるが,しらす土が液状化しやすくなるのは,それ以上に破砕性や,摩耗による供試体内からの水分の間隙部への移動などが影響すると考察した。この成果は令和2年度地盤工学研究発表会にて発表予定。 さらに土水連成系解析のための定式化についての理解を深めた。AFモデルをベースにした非線形移動硬化則を考慮した陽解法(荷重増分法)による飽和砂の繰返し三軸試験を再現するための弾塑性構成式の構築プログラムを作成した。さらに,京都大学の渦岡教授のアドバイスを受けながら,有限変形理論に基づいた土水空気の連成解析のための定式化を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り,経年劣化した野外盛土での計測,しらす土の破砕性,圧縮特性の定量的評価などを行って具体的な成果が上がってきている。さらに,土水連成解析における粒子の摩耗に伴う質量交換,固相の圧縮性を考慮できる定式化を進めている。繰返し挙動を表現するための非線形移動硬化則を中心にした定式化の理解を深めた。 細粒分が流失した地盤への,細粒分を補うための試験として,細粒分を抜いたしらす土に対してのベントナイトミルクの室内通水試験を行った。いずれ,野外盛土での実規模を想定した試験を行い,それに伴う保水性,浸透特性の改善についての検証を行うための基礎データを採取できた。 地震時のしらすの挙動に関して,基準化累積損失エネルギーをベースにまとめた論文が地盤工学ジャーナルに採択掲載された。令和2年度に開催予定だった世界地震会議への論文投稿,地盤工学研究発表会への投稿も完了している。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き野外盛土の,降雨時浸透挙動のデータ採取を行い,保水性の変化を把握する。 現地計測から得られた水分特性曲線の変化,履歴を用いて,不飽和浸透流解析を行い体積含水率の実測と解析の変化を検証する。 しらすの流動化のしやすさ解明のために,粒子同士の摩耗性に関する試験を実施する。そのデータを用いて摩耗による土間隙内水と間隙水の質量交換を考慮したモデルを提案する。 2020年9月に開催予定だった世界地震会議に論文を投稿しているが,2021年に延期になったため,そこでの発表に向けて準備を進める。査読付き論文への投稿を進める。 ベントナイトによる,地盤の密実化について,今年度は定水位透水試験装置を用いて,より実規模に近い形で再試験を行う。
|