研究課題
火山灰質土であるしらすからなる野外盛土を,2004年に築造後16年が経過し,劣化が進んだ盛土への降雨時浸透挙動の変化把握、植栽の有無の浸透に及ぼす影響,地盤の保水性の変化,細粒分の流失など劣化の評価を行った.盛土側面の地表部、上層,中層,下層から試料土を採取し,粒度試験を行ったところ,表層部で細粒分が減少し,劣化が進行していることが分かった.上層以下では施工当初と比較して,粒度分布に顕著な変化は見られず,劣化は表面部15cm未満で生じていることも分かった.サクションと体積含水率の関係から求まる保水性は,施工当初と比較して低下している傾向にあり,土骨格間の間隙径が拡がってきていることも確認できた.2018年から2020年に測定された水分特性履歴を用いて,降雨時表面流出,吸水・排水過程のヒステリシスループを考慮した二次元飽和・不飽和浸透流有限要素解析コードを作成し,降雨時の体積含水率の再現解析を行ったところ,実測値と解析値で良好な整合性が得られた.流失した細粒分をベントナイトミルクで補うための室内試験を,定水位透水試験装置を用いて実施した.細粒分の目詰まりが生じ,透水係数を低下させることができ,試験後の試料土の粒度試験結果から,特に表層付近を中心に細粒分が補われている事が分かった.小型繰返し一面せん断試験装置を作製して,拘束圧条件下でのしらす土粒子同士が相対移動する際の摩耗量を評価するための試みを行った.採取場所の異なる2種類のしらすを,旋盤加工により立方体に整形した供試体を用いて試験を行ったところ,供試体の吸水率(空隙率)は0.80~1.86(吸水量-g/乾土-g)に対し,摩耗量変化率は0.0014~0.0095 (g/cm2/m/kPa)であった.供試体表面部と深部でも摩耗量変化率は変化した.吸水率が大きく,より多孔質なしらすほど, 摩耗量も大きくなる傾向にあった.
2: おおむね順調に進展している
当初計画通り,築造後16年経過したしらすからなる盛土での、降雨時浸透特性、保水特性の変化把握のための野外計測を継続して行っている。また、盛土表層から下層にかけての密度、粒度分布の変化を定量的に評価把握できた。流失した細粒土の充填対策として、ベントナイトミルクの注入試験も行った。目詰め効果により、透水係数が低下し、浸透試験後の粒度分布から、流入側を中心に、細粒分が充填されていることが確認できた。降雨時の雨水浸透抑制効果を確認できている。野外盛土試験から得られた、水分特性履歴、吸水過程と排水過程間のヒステリシスループを考慮出来る飽和・不飽和浸透流解析コードを作成できた。しらす単体の、性質について、単粒圧縮強度、体積弾性係数、粒子同士がせん断変形を受けた場合の摩耗量の定量的把握等の再現実験は継続中である。また,それら材料特性を考慮した土水連成有限要素解析コードについては現在検証中である.
野外盛土試験から得られた、水分特性履歴、吸水過程と排水過程間のヒステリシスループを考慮出来る、新たに作成した飽和・不飽和浸透流有限要素解析コードの、材料パラーメータの妥当性、信頼性検証ののち、実測と解析との比較、降雨パターンと浸透挙動の関係の数値モデル化をより進め、その研究成果を土木学会論文集や不飽和地盤工学国際会議に投稿する予定である。これまで定量的に得られた、しらす土粒子の体積弾性係数、摩耗量などの結果をもとに、体積摩耗による固相から液相への質量交換や粒子自身の体積変化を考慮した地震時繰返し荷重作用時の変形挙動の解明のための定式化、土水連成有限要素解析を行う。その成果を土木学会論文集やSoils and Foudationsに投稿予定である。
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八戸工業高等専門学校紀要
巻: 55 ページ: 77-83
10.24704/hnctech.55.0_77
Proceedings of the 17th World Conference on Earthquake Engineering, 17WCEE Sendai, Japan - September 13th to 18th, 4e-0002
巻: 1 ページ: 1-8