研究課題/領域番号 |
18K04360
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
田中 岳 北海道大学, 工学研究院, 助教 (90333632)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 流出モデル / 確率応答 / 集中化 |
研究実績の概要 |
洪水被害は河川整備が行き届かない地方で拡大しているが,その地方では財政,人材の課題から利便性を第一に洪水予測システムを選択せざるを得ない状況にある.このため,現業のシステムには流出現象を概念的に記述した集中型のモデルが組み込まれる傾向にある.しかしながら,この概念モデルには適用できる流域面積やモデルパラメータの物理的意味付けなど,未解決の基礎的な問題が含まれている.本研究ではこれらを解決するとともに,地方の中小河川流域を対象として降雨流出系の不確実性が流出予測に与える影響をも定量化ができる洪水予測システムを開発するための研究基盤を確立する.そこで,斜面と河道,個々の流れを物理モデルで記述し,これが高密度に分布したシステムを用いて,①降雨量,②地形・地質特性,③初期の湿潤状態の不確実性を確率論的に定式化した上で流出量の確率密度関数を推定する.これと別途推定された概念モデルの確率応答特性との比較から,上記の基礎問題を解決する. 2018年度は,二斜面一河道から成る単位流域の斜面と河道,個々の流れをKinematic Waveモデル(物理モデルの一つ)で記述することを前提として,斜面の二次元流れモデル(2D Kinematic Waveの確率応答特性を導く方法を検討した.その結果から,本モデルの確率応答特性は,一様勾配の斜面に対してこれまでに提案されていた斜面長の分布を考慮した上で流れを一次元流れで近似したモデルからの特性をも包含して示し得ることも確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
後で述べるように,観測資料と先行研究に基づき,①降雨量,②地形・地質特性と③初期の湿潤状態の不確実性を確率論的に定式化すること(確率分布形を決定するパラメータの推定)は2019年度も継続的に取り組む状況にある.しかしながら,流出モデルの確率応答解析については応募者が確立してきた技法が基盤であるため順調に進展したと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
流出現象を概念的に記述した集中型のモデル(貯留型流出モデル)は,実務面での利便性が高いモデルであるが,その一方でモデルパラメータの同定とその物理的意味付け,モデルが適用できる流域面積など未だ解明されていない基礎的な問題を抱えている.この未解決の基礎研究を完成し,合理的に洪水予測システムを選択するための基盤を構築する目的で,2018年度に引き続き,観測資料と先行研究に基づき,①降雨量,②地形・地質特性と③初期の湿潤状態の不確実性を確率論的に定式化することに取り組む. また,その結果を踏まえて,自己相似性のある模擬河道網に斜面を連結させたシステム(単位流域が高密度に配置)を用いることで,解析対象の流域スケールを,先に述べた斜面流れから二斜面一河道から成る単位流域,さらには山地域の中小河川流域規模にまで拡大し,流出量の確率特性(1~4次モーメント)とその確率密度関数を推定する.更に,研究の進捗によっては,この結果と別途推定されてきた貯留型流出モデルの確率応答特性(1~4次モーメントと確率密度関数)を比較し,貯留型流出モデルのモデルパラメータの物理的意味付けと,これが適用できる流域面積を明らかにすることにも取り組む予定である.
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