研究課題/領域番号 |
18K04361
|
研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
吉川 泰弘 北見工業大学, 工学部, 准教授 (50414149)
|
研究分担者 |
朴 昊澤 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 北極環境変動総合研究センター, ユニットリーダー代理 (10647663)
大島 和裕 公益財団法人環境科学技術研究所, 環境影響研究部, 任期付研究員 (40400006)
横山 洋 国立研究開発法人土木研究所, 土木研究所(寒地土木研究所), 主任研究員 (70442879)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 寒冷地河川 / アイスジャム計算モデル / 陸面モデル / 解氷 |
研究実績の概要 |
A.水理条件と気象条件を考慮した解氷現象の解明 (1)河氷がいつ,どのような条件で破壊され解氷に至るのかを明らかにするために,2018年3月北海道アイスジャム災害において人災が発生した辺別川で現地観測を実施した.現地観測の結果,気温上昇と日射の影響により融雪が促されて流量および水位が上昇し,水位上昇の影響により河氷が破壊されて解氷に至る現象が予見された.(2)気象から見た解氷現象の解明するために,東シベリアのレナ川における河氷融解とそれに伴う急激な流量増加に影響を及ぼす気象場について調査を実施した.日本ではヤマセをもたらす気象場として知られているオホーツク海高気圧は,東シベリアでは春の気温上昇を招き,積雪と河氷の融解を促進することが分かった.5月にオホーツク海高気圧が発生するとレナ川中流域では気温が高くなり,流量の増加が平年よりも早まる傾向がある.今後,考察を深めるために,暖気移流による気温変化に加えて日射などの他の要因も考慮して調査をする予定である. B.アイスジャム洪水を対象とした氾濫解析手法の開発 (1)数値計算モデルに河氷流下堆積式を組み込み,その再現性を検討した.ポリプロピレン製の氷板模型を用いたアイスジャム実験を実施し水位の実験値を得た.計算水位と実験水位の比較から,本計算モデルでアイスジャム発生箇所より上流の水位上昇と下流の水位下降を再現できることを示した.一方で再現性を高めるためには,計算モデルの基礎式においてアイスジャムが流水へ与える影響を適切に評価することが上げられた.(2)河氷の流下,堆積(アイスジャム),決壊,流下の現象を対象に,実氷を用いたアイスジャム実験を実施した.実験の結果,実氷の流下,堆積に加えて,アイスジャムの決壊,流下現象を水理実験で再現することが出来た.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は,当初計画していた研究内容を実施しており順調に研究は進捗している.
|
今後の研究の推進方策 |
A.水理条件と気象条件を考慮した解氷現象の解明 2019年度計画:「融解による解氷」と「破壊による解氷」の解氷現象を再現できる河氷融解破壊式を開発する.2018年度の現地観測で得られた河氷温度を基礎資料として用いる. B.アイスジャム洪水を対象とした氾濫解析手法の開発 2019年度計画:アイスジャム洪水の氾濫解析手法の開発および計算値の妥当性の確認を行う.本解析手法は,アイスジャム洪水による平面的な陸域への氾濫現象を再現可能な計算モデルとして,河川水の流れ,河氷の流れ,河川水温に関する計算式で構成する. C.気候変動がアイスジャム洪水に与える影響 2019年度計画:既存の陸面モデルに,本研究で開発するアイスジャム洪水の氾濫解析手法を組み込む.2020年度計画:改良した陸面モデルを用いて,近年の気候変動により,北極陸域の広域でのアイスジャム洪水の規模,発生時期と発生地点,発生頻度がどのように変化しているかを明らかにする.
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初,水理実験資材および現地観測機器を購入予定であったが,他の研究費で購入したものを流用したため,当該助成金が生じた. 当該助成金の次年度の使用計画は,アイスジャム計算モデルを開発するための計算機器購入などを計画している.
|