研究実績の概要 |
利根川水系鬼怒川のセグメント1区間(複列砂州河道形態)を対象に,河道特性の資料解析,現地調査を行い,河道特性の経年変化を検討した.とくに既往最大出水であったH27出水(関東東北豪雨)での河道変化応答から,(1)複列砂州を維持する区間,(2)単列化が顕著な区間及び (3)その中間状態にある区間を抽出した.これらを区分する支配要因としては,低水路幅,横断面内比高差,砂州と低水路法線形に見る河道平面形状および河道内植生の繁茂状況が強く関わっているものと推測された.そこで,現況河道形状での平面2次元河床変動解析から,上記(1),(2),(3)の傾向を捉えるとともに,横断面内比高の部分的解消が(2),(3)→(1)の傾向を生み出すこと,及び平坦床条件の河床変動計算から現況の低水路幅が(1),(2),(3)への河道形態応答を促す傾向を抽出した.これらより複列砂州河川の維持機構(単列化に対する複列砂州維持の自律性メカニズム)と複列砂州の河相変質機構(単列化を強制化する要因とその非可逆的変化のプロセス)の仮説を立てる上での有用な知見を得た. また,複列砂州に内在する単列砂州モードの卓越化現象と,河床・河岸条件が砂州の単列化に及ぼす影響を解明するため,大型直線水路を用いた移動床水理実験,実験条件に合わせた平面2次元流況計算,河床変動解析を行った.これより,複列砂州の変形過程として左右岸砂州の片側が発達することで非対称性が生じ,これが単列化(蛇行流路の形成)に至るプロセスを明らかにした.また,そのプロセスに与える河岸侵食の影響(低水路幅の拡大と土砂供給),さらに中小洪水が単列化に及ぼす影響を見るため,砂州形成流量からの流量減少が単列化に及ぼす影響も考察した.その結果,複列砂州の変形としての単列化は土砂供給条件から堆積傾向となる場において生じる流路変動と捉えることができた.
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