研究課題/領域番号 |
18K04366
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
原田 英治 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (00362450)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 数値移動床 / 砕波 |
研究実績の概要 |
Lagrange型の数値流体計算手法である粒子法は,激しい自由水面変動を伴う砕波に対して,精度良く解析できるツールとして知られている.本研究では,流体解析に高精度化された粒子法(MPS法)を用いて,砕波帯以浅領域での波浪場を解析し,一方で底質構成粒子スケールから土砂輸送機構の理解を深めるため,底質構成粒子挙動の追跡には個別要素法(DEM)を採用する.DEMと高精度MPSによるLagrange-Lagrangeカップリングモデルを用いて砕波帯や波打ち帯での激流状況下での土砂輸送機構を計算力学的観点から検討することを目的としている. 本年度は,2次元ではあるがDEM-MPSによるLagrange-Lagrangeカップリングモデルを用いて砕波帯から波打ち帯における数値シミュレーションを実施した.砕波帯での底質輸送に対する間隙水の重要性を計算力学的に示し,その成果を論文にまとめ発表した.また,2次元造波水路を用いて波打ち帯漂砂を対象にした水理実験を実施し,汀線付近で形成されるripple形状の発達過程を計測するとともに,3次元のDEM-MPSによる数値シミュレーションを実施し,底質構成DEM粒子間の接触点数の観点から移動床の輸送機構を考察した.ただし,計算機制約から実験水路スケールをそのまま数値実験に与えることができず,限定された領域での考察であるので,2019年度には小規模2次元造波水路を用いた類似の実験を実施し,同規模スケールの計算を実施する予定である.もう一つ,2018年度は,振動台を用いた強制振動下で生じるrippleの形成機構を対象に水理実験を実施し,3次元のDEM-MPSによる計算結果を用いて,強制振動下でのripple形成過程の内部構造を計算力学的観点から検討を進めた.この小規模実験は計算機性能の制約を鑑みて実施したが,研究成果は2019年度以降に発表する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要でも示したが,砕波帯よりも浅い領域における移動床過程を対象にし,A)水理実験によるアプローチとB)数値実験によるアプローチの双方から検討を予定した. 具体的には,1:Lagrange 型数値モデル(DEM-MPS)による3次元での数値シミュレーションから砕波帯から波打ち帯での移動床発達過程模擬する,2:数値シミュレーション結果から,砕波による組織的な渦構造と移動床内部の間隙水圧の空間分布や流速分布から,移動床の輸送機構を数値漂砂力学的な観点から検討する,3:2次元造波水路を用いて,砕波帯以浅での漂砂を対象に水理実験を実施することを計画した. 研究初年度(2018年度)には,3次元のDEM-MPS法の数値シミュレーションコードの開発するとともに,水理実験を同時並行で進める計画であった.数値シミュレーションコードについては,限られた実験結果に対する比較であるため今後の改良は必要であるが,初年度に基本の数値シミュレーションコードの開発は終えた.また,水理実験結果との比較は,数値計算モデルの妥当性を検証には不可欠であるが,既発表されている他者の実験データとの比較と,自前の水理実験結果との比較も実施した.これらの研究成果を論文にまとめた.以上の進捗状況から,”区分”としては(2)概ね順調に進展している.と考えている.
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今後の研究の推進方策 |
強い非線形性を持つ砕波領域での土砂輸送を扱うため,砕波帯以浅での底質土砂輸送機構の検討は非常に困難である.水理実験では,砕波による自由水面の激しい変動と気泡混入状態は,土砂輸送に関する実験データ解析の障壁となる.一方,3次元の数値シミュレーションでは,計算機性能制約から領域計算の設定に限度がある. 使用可能な計測機器の性能制約と設定できる実験条件に配慮して,水面変動の激しい状況下での移動床過程の輸送機構を検討するため,小型2次元造波水路を用いた実験および振動台を用いた強制振動下で発生する移動床微地形を対象に実験を実施する計画である.また同時に実験と同じスケールの数値シミュレーションを実施し,実験計測が困難である移動床内部の構造を詳細に検討する方向で本研究を推進する計画である.
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次年度使用額が生じた理由 |
数値シミュレーションのための数値コードの開発を進めつつ,水理実験を実施する研究計画を予定していたが,双方を進める途中で,実験スケールと同じ数値シミュレーションの実施は,研究予算で数値計算機用PC購入しても困難であること,また,移動床実験で移動床を詳細に撮影できるスペックのハイスピードカメラの購入も研究予算では厳しいと判断し,購入を見合わせたため次年度使用額が生じた.計算機性能制約と実験スケールを考慮し,既存の機材を使用しつつ移動床機構を移動床構成粒子スケールから検討する数値漂砂力学的な観点から研究を進めるため,小規模実験を実施するための研究費(物品費)に充当する計画である.
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