砕破帯から波打ち帯の漂砂過程は、自由水面変動の激しい、土砂輸送に強く影響を与える代表的な現象である。激流下では固液相間の運動量交換が顕在化するため,大量の土砂が輸送されることとなる.そのため、土砂輸送機構の理解は工学上重要ではあるが、砕波帯以浅で観察される土砂輸送現象は強い非線形性を有するため,実験,現地観測による計測はもとより数値シミュレーションによる検討も困難であり十分な理解には至っていない。顕著な自由水面変動を伴う現象の数値シミュレーションには、Lagrange型の流体解析手法の粒子法が有効である.粒子法はEuler型の流体解析手法と比較して、移流項の離散化による数値拡散がなく自由表面をシャープに捉えることが可能である。本研究では、Lagrange型の流体解析手法である高精度化されたMPS法とLagrange型の固相粒子追跡モデルである個別要素法(DEM)による混相流解析手法を基軸として、砕破を含む激流条件下での底質輸送機構と特に砂漣(ripple)の形成機構について水理実験との比較を実施しつつ検討した. 研究計画は3ヶ年(2018年度から2020年度)であったが,初年度は,3次元DEM-MPS法の数値コード開発を進めた.また,振動台装置を用いた小規模砕波を伴う移動床実験を実施し,数値コードの再現性を確認した.2年目は,砕波帯以浅における底質輸送機構を検討するため,振動台に加えて小型の2次元造波水路を用いた水理実験を実施した.振動台実験では,移動床表層のripple形成過程の実験および混合粒径粒子移動床での分級機構を検討した.実験結果と3次元DEM-MPS法の数値シミュレーションの比較から,輸送機構および分級機構を計算力学的に検討した.最終年度も継続して,数値計算および振動台実験および小型2次元造波水路を用いた水理実験を進め,組織乱流と底質輸送機構について議論を深めた.
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