研究課題/領域番号 |
18K04369
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
堀 智晴 京都大学, 防災研究所, 教授 (20190225)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 豪雨 / 洪水 / 確率降雨 / 計画降雨 / 時空間分布 / リスク / シミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、豪雨の強度と時間・空間スケールとの関係に基づいた洪水リスク評価の方法を確立し、河川の任意の地点における洪水リスクをその地点の集水面積とその面積スケールに対応する豪雨特性から把握する方法を提案することにある。 2019年度は、前年度に引き続き、豪雨のDAD関係に基づいた豪雨シナリオの作成手法について検討するとともに、新たに、水系内の任意の地点における洪水リスクを算定するためのセル分布型流出モデルの開発を行った。昨年度開発した模擬豪雨発生アルゴリズムは、ピークを挟むすべての継続時間と、ピークメッシュを含むすべての空間スケールでDAD関係を保存するものであったが、模擬発生の過程で負の雨量強度が発生するケースがあった。この問題について検討を重ねた結果、すべての空間スケールにおいてDD関係を保存するというアルゴリズムに無理があることを見出し、この保存制約を、各時刻における雨量強度を順序統計慮とした場合に、各順位の継続時間内雨量がDD関係を保存するという制約に緩和することによって、不自然な値の発生を防ぐことができることがわかった。次いで、模擬発生させた多数の豪雨による流出を追跡し、水系内の任意の地点のピーク流量やハイドログラフを求めるため、A層流れを考慮したキネマティックウェーブモデルに基づく斜面流出と河道網内の洪水追跡を行う流出解析システムを構築した。基礎となる流出理論は古典的なもので、同種の機能を持つソフトウエアはフリーで公開されているものもあるが、汎用性を実現するために計算負荷が大きくなってしまう傾向がある。そのため、本研究で必要な機能のみに特化したスリムなシステムをコーディングした。 以上の結果、過去の豪雨記録からDAD関係を抽出し、任意の再現期間に対してDAD関係を保持した豪雨を多数模擬発生させ、洪水ピーク流量を求める一連の洪水リスク評価計算が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的を達成するために必須である豪雨の模擬発生手法と、洪水流出解析システムの構築の大部分を終えることができた。前年度に開発した豪雨模擬発生アルゴリズムの持っていた問題点の改良も終えており、計画は順調に進んでいると言ってよい。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は本研究計画の最終年度であり、過去2年間で開発した道具立て(DAD関係を保存した多数の豪雨シナリオの模擬発生手法と、分布型流出解析に基づく水系内任意地点での洪水リスクの算定手法)を駆使し、実流域で実際に洪水リスク分析を実施する予定である。これにより、豪雨の時空間分布が水系内の各地点の洪水リスクに及ぼす影響が具体的、定量的に評価できるようになる。さらに、考える地点が流域の上流、中流、下流のいずれに位置するか、本川・支川のいずれに位置するか、集水面積はどれくらいかといった特性によって、洪水リスクがどのように変化するか、豪雨の時間分布との関係に注意しながら、分析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度、2019年度は、解析雨量データから豪雨のDAD関係を抽出すること、DAD関係に基づく模擬豪雨の発生アルゴリズムを構築すること、リスク評価用の降雨流出モデルをコーディングすることが中心であったため、現有計算資源で何とか対応することができた。そのため、性能向上が急速なリスク解析用計算機を最終年度に調達することで、コストパフォーマンスの高い使用計画としている。
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