研究課題/領域番号 |
18K04374
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
溝口 敦子 (寺本敦子) 名城大学, 理工学部, 教授 (40362280)
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研究分担者 |
知花 武佳 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (10372400)
川村 里実 (山口里実) 国立研究開発法人土木研究所, 土木研究所(寒地土木研究所), 主任研究員 (70399583)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 混合粒径 / 河床形態 / 交互砂州 / 粒径別流砂量 / 粒度分布 |
研究実績の概要 |
近年多発している豪雨による土砂生産から土砂の流下現象,および総合土砂管理の観点を踏まえると,河道内での土砂移動による災害や河川内の土砂の流れ,地形変化の特徴を解明する必要がある.ただし,河川縦断方向の土砂の伝播を知るには,単なる量ではなく,粒度(質)も非常に重要な要素となるし,河道にある地形が流下現象を変化させる可能性がある.そこで,本研究は,高度化した計測技術・解析技術を利用し現状を把握し,改めて実河川で河道内砂州が下流へ伝播する過程とその河道形状を構成する材料の粒度と土砂の流れ,供給条件が変化した場合の変化を調べる.これによって,砂州河道を流下する土砂の評価方法の提案を目的とする.そのために,砂州の特徴と粒度分布の関係,地形変動を調べる現地調査と水路実験を実施し,最終的に砂州河道を流下する土砂量の評価方法を提案する. 初年度に引き続き,2019年度は天竜川や大井川,庄川,手取川などの扇状地区間河道を対象として過去の資料から河道条件と流路変動状況について調べた.天竜川の上流支川である小渋川では現地調査に入り,地形,粒度分布の特徴を調べた.初年度の成果に加え,人工構造物や流況の影響で供給条件が変化し,河道を変化しうることや,それによって変動条件が変わり植物の侵入につながったことが分かった.また,実験では供給条件の変化により砂州の表層粒度が上流から変化し動きが鈍化したり,砂州形状の変化につながったりすることが分かった.ただし,上流からの粒度の変化が伝播しない間は,河床に捕捉されていた細粒分が流れ出す現象も確認され,通常時はそれにより流路部分に細粒分が集まる可能性が示唆された.最後に,砂州形状は,各流量の川幅を変化させ,全幅で土砂が流れる流量や流砂量を変化させるため,この視点を取り入れ,最終年の検討を実施する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では,次の五つの項目を掲げていた. ① 実河川における粒度分布の特徴の整理と類型化,② 砂州河道における粒度分布の平面的な特徴および縦断方向の変化に関する現地調査,③ 粒度パターンによる砂州の動きと,土砂動態の特徴に関する実験的検討,④ 上流からの供給土砂の量と粒度が河道地形に及ぼす影響と土砂動態の変化に関する検討,⑤ 砂州河道を有する区間の粒径別流砂量の評価方法の提案 それぞれの状況について,以下に示すように,それぞれの進展を考えると,おおむね順調に遂行できていると考える.①について,今年度までに,現地調査結果から一部の河川ではあるが,限られた河川ではあるが粒度分布を調べ,分類がほぼ完了したと考えている.特に,値でなく,河川の代表的な流量に対し移動限界がどの程度にあるかという視点でみることが重要であることが分かった.②について,予定通り実施しているところである.ただし,出水によって表層状態は変化しうるため,どのような視点で取りまとめるべきかを検討中である.③については,限定された条件下ではあるが,実験を実施した.砂州が形成されたケースでは④の一部の検討も行っている.難しいのは実験スケールでは粒度構成等河床材料粒度分布によっては,交互砂州地形が上手くできない場合もあるため,河床材料それぞれの役割を見分けつつ,実験での検討を続ける予定である.
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今後の研究の推進方策 |
初年度の成果を受け,2019年度は,さらに,実河川での砂州形状と粒度情報の整理を行った.開始当初から現在までに,大井川,庄川,天竜川,手取川を中心に,入手できた過去の航空写真を整理し,水域情報,地形,縦断方向変化など河道条件とその変化について整理した.申請当初,単純化するために砂州地形と粒度分布の関係は現状のみで調べる予定であった.しかし,水と土砂の供給条件が変化すれば,河道内の状態も変わる.ダムによる流量制御や土砂供給の変化,また,降雨量が変化する中で土砂が流下するため,河川を限定しても,変動の幅がある.もともとの地質的特徴に加え,供給条件が特定の変化をすると,表層状態がどのように変わりうるのか,そういった視点が重要であることが分かってきた.そのため,それぞれの粒度と地形変化パターンをある程度把握しながら粒径別の流砂量の推算に向けた検討を進めることにした. また,実河川の流路変動状況と粒度分布の変化を調べた結果,流路変動には土砂供給が大きく関与する可能性が高い.特に細粒分が豊富にある大井川は未だに流路変動が激しいことから,細粒分が抜ければ流路変動は不活発になると言える.多少の出水で流路を活発に変動させるためには,上流から豊富な土砂供給が必要であるが,現在取得できる情報は,河床材料として残留したもののみであり,広い粒度土砂供給を表現できる手法はない.そのため,交互砂州によって生み出される形状,流砂特性とともに,河床材料と流下材料に関する流砂機構に関する研究を並行して行う予定である.
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