研究課題/領域番号 |
18K04377
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研究機関 | 国立研究開発法人防災科学技術研究所 |
研究代表者 |
村上 智一 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 水・土砂防災研究部門, 主任研究員 (80420371)
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研究分担者 |
下川 信也 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 水・土砂防災研究部門, 総括主任研究員 (40360367)
河野 裕美 東海大学, 沖縄地域研究センター, 教授 (30439682)
水谷 晃 東海大学, 沖縄地域研究センター, 技術職員 (80773134)
小笠原 敏記 岩手大学, 理工学部, 教授 (60374865)
岡辺 拓巳 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50464160)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 台風 / 流速 / 波浪 / 高潮 / 数値予測 |
研究実績の概要 |
研究の目的は,温暖化時の強大台風に匹敵する台風下の流速・波浪などの海洋実測データを取得し,それを基にした高潮・高波・浸水の数値予測を行うことである. 当該年度では,WavesADCPおよび水温計を西表島網取湾に設置し,強大台風下の海洋観測データおよび気象平常時の海洋観測データの取得を試みた.その結果,西表島に接近した台風1905,1909,1913,1918および1927号の5つの台風時の流速,波浪,水温データの取得に成功した.また,年間を通した観測を行うことで,気象平常時の流速,波浪,水温データも取得できた. また,海洋流動モデルFVCOMを用いて,伊勢湾湾奥部を対象とする高潮浸水計算を実施した.台風条件は,①1959年伊勢湾台風,②IPCCのA1Bシナリオに基づく将来気候下の可能最大級台風の2つである.伊勢湾台風による高潮計算では,名古屋港の潮位偏差を良好に再現できることを検証した.また,伊勢湾台風を契機に整備された海岸構造物により,伊勢湾台風規模の高潮はほぼ防護できることを確認した.次に,将来気候下の可能最大級台風による高潮浸水計算を実施し,浸水過程および高潮防護施設の減災効果について検討した.また,構造格子モデルによる既往の計算結果との比較から,構造物の取り扱いなど非構造格子モデルの特徴を明らかにした.同時に,高潮浸水解析用に改良した津波シミュレータT-STOCを用いて,名古屋港周辺を対象地域とする現在/将来気候下の可能最大級台風の高潮浸水解析も実施した.その結果,名古屋港においては伊勢湾台風を約2m上回る潮位となり,海抜ゼロメートル地帯を中心に広範囲で浸水が生じた.また,防潮扉の開閉を考慮した解析を実施した結果,防潮扉の閉鎖により堤内地の浸水開始時刻は遅くなるが,一方で高潮潮位が防潮壁を上回る場合は,浸水開始以降の避難時間の猶予は短くなるという知見が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度までに西表に接近した9個の台風下の流速,波浪,水温データの取得に成功した.特に台風1808号は,最大瞬間風速42.4 m/sを記録しており,このような強風時の詳細な海洋観測データは,少なく,貴重なものであると考える.さらに,気象平常時と台風時の海洋・気象条件の比較が必要なことから,年間を通した海洋観測も行い,このデータを解析することで気象平常時の流れ場の特性がわかった.また,数値予測では,海洋流動モデルFVCOMおよび高潮浸水解析用に改良した津波シミュレータT-STOCを用いて現在・将来気候下の可能最大級台風の高潮浸水解析を行った.
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今後の研究の推進方策 |
網取湾が位置する沖縄県西表島は,地理的条件から強大な台風の来襲確率が高く,実際に1951~2019年の台風来襲個数の年平均値は4.1個,これまでの西表島における最大瞬間風速の最大値は,台風0613号来襲時の69.9 m/sである.このことから,台風下の海洋観測を継続し,温暖化時に三大湾に来襲すると予測されている強大台風に匹敵する台風下のさらなる海洋観測データ取得を目指す. また,強風下の乱流モデルや海面抵抗係数のバルク式に得られた温暖化時の強大台風に匹敵する台風下の流速・波浪・風速・海底地形データを入力し,それらの妥当性を検証する.そして,観測データを用いた逆解析手法によって,温暖化時の強大台風の暴風に適用できる乱流モデル・バルク式の新たな係数などを提案する. 数値予測では,海洋流動モデルFVCOMおよび高潮浸水解析用に改良した津波シミュレータT-STOCに検討・改良した乱流モデル・バルク式に置き換え,温暖化時の強大台風による高潮・高波・浸水を再評価する.
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