研究課題/領域番号 |
18K04379
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
高橋 清 北見工業大学, 工学部, 教授 (50236270)
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研究分担者 |
萩原 亨 北海道大学, 工学研究院, 教授 (60172839)
富山 和也 北見工業大学, 工学部, 准教授 (70589580)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 自転車振動モデルの開発と評価システムの実装 |
研究実績の概要 |
自転車交通への需要が高まる中、安全で快適な自転車の走行環境を整備するため、走行路面の効果的かつ効率的な調査と客観的データに基づく合理的な走行路面の評価・管理は益々重要となると考えられる。しかし、現在の路面評価・管理手法は、車道における自動車の挙動に基づいて構築された手法である。また、乗り心地に直結する路面の平坦性評価指標等は自動車の挙動をモデル化したものであり、自転車の挙動を考慮したものとはなっていない。そこで本研究では、自転車の安全性や快適性といった質の高い道路交通基盤整備を行うために、自転車の走行挙動を考慮した路面評価指標の開発と、路面評価システムの構築を行うことを目的としている。 本研究グループは、一昨年度、1自由度系による自転車前輪部の振動モデルを開発した。しかし、開発したモデルでシミュレーションを行ったところ、加速度の値等の再現性に課題があると判断し、振動モデルの改良を行った。改良した2自由度系自転車振動モデルでは、ハンドル部における再現性は時間領域、周波数領域ともに高い再現性が確認され、さらに周波数応答関数を算出したところ、自転車の振動特性が再現され、開発したモデルは実用上問題のないことが確認された。しかし、開発したモデルは実道路面のプロファイルを入力した場合の上下加速度の再現性検証はなされていない。 そこで当該年度では、開発された振動モデルに実路面のプロファイルを入力した場合の再現性について検証を行った。また、実道路面を自転車で走行したときの乗り心地を評価する自転車体感評価実験を行うことにより、開発したモデルを用いて自転車版IRIとしてBRI(Bicycle Ride Index)を構築し、乗り心地との関係性を分析することでBRIの妥当性について検証を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究成果は、本研究グループが開発した振動モデルの実路面における再現性の検証および自転車からみた路面評価指標の構築を行った点である。研究成果を以下に記す。(1)自転車加振実験により開発されたモデルは実路面のデータを入力した場合においても、10~30 Hzにおいて再現性が高いことが明らかとなった。(2)開発したモデルを用いて、BRIを算出した結果、IRIに比べて大きい値が算出される傾向が示された。また、主観評価とBRIの決定係数を算出した結果、主観評価とBRIの相関は高いことが示された。よって算出したBRIは乗り心地を反映した値であることが示唆された。一方で、IRIと主観評価には相関がみられず、IRIは自転車の乗り心地評価には適さないことが明らかとなり、BRIのIRIに対する優位性が示された。(3)自転車体感評価実験により、自転車の乗り心地は自動車に乗っている時とは違い、10~30 Hz付近の振動が影響していることが示唆された。よって、自転車と自動車では乗り心地に影響する周波数帯が異なることが明らかとなった。以上の研究成果は研究論文としてまとめ、発表済みである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下のサブテーマに沿って研究を推進する計画である。 サブテーマ③ 自転車振動モデルに基づく路面評価指標の開発:R1年度は構築したシミュレーションモデルを用い、乗り心地に影響する自転車の振動特性を考慮した自転車版IRIとしてBRIの構築を行った。しかし、本研究におけるBRIの妥当性の検証は、4つの路面データのみで行っているため、本研究で用いた路面とは違う特性を持った路面データを用いて、さらに妥当性を検証する必要がある。その他,BRIの評価区間長の設定や車種による違い等について、さらなる分析が必要と考える。 サブテーマ④ 開発した指標に基づく路面評価システムの実装と妥当性検証:本研究開発の目指す路面評価システムは、自転車の振動特性にその基礎をおき、路面調査から指標による評価、さらには路面管理を一体化した路面評価システムを考えている。路面評価システムの実装にあたっては、進行方向に対して横方向の運動の影響が大きい自転車を考慮し、従来の線的な路面管理に加え路肩部も含めた多面的な測定に基づく評価が必要である。
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