研究課題/領域番号 |
18K04386
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 昌毅 東京大学, 生産技術研究所, 特任講師 (50530086)
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研究分担者 |
谷本 圭志 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (20304199)
宮崎 耕輔 香川高等専門学校, 建設環境工学科, 准教授 (60469591)
桑野 将司 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (70432680)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 公共交通ビッグデータ / 公共交通オープンデータ / 公共交通データ分析 / 災害時の公共交通情報 |
研究実績の概要 |
本研究では、地方の公共交通の実態把握を可能にするビッグデータを複数種類比較し、その特性を明らかにするとともに、ビッグデータからのより精度の高い交通実態把握技術を開発する。公共交通の乗客数や利用経路などの実態は、地方でも都市でも完全には把握できておらず、断片的な調査から推定されているのが実態である。特に地方ではデータが十分揃わず、公共交通の利用実態の把握はさらに困難である。本研究では、地方においても入手可能性が高い複数のビッグデータそれぞれの特性を分析する。 2年目にあたる本年度は、初年度に続いてビッグデータの収集、解析環境の整備を進めるとともに、様々な分析手法の試行を行った。ODデータとしては、当初より研究フィールドとして設定していた香川県の「ことでん」ICカード(IruCa)のデータに加え、青森市営バス、八戸市営バスの整理券データを研究対象に加え、それぞれGTFSによるStaticデータと紐付けるとともにSQLにて処理を可能にすることでICカードが導入されていない環境でのデータ分析基盤を構築した。リアルタイムデータとして、岡山県の宇野バスよりオープンデータとして提供されているGTFS RealtimeデータのVehicle PositionやAlertなどの収集やStaticデータとの紐付けを行った。またGTFSデータについては差分更新のワークフロー自動化を進め、時系列を追った分析を可能にしている。 これらのデータからのGISなどを用いた可視化や類似行動の抽出などの分析を実現するとともに、災害など動的に交通状況が変わる環境で短期サイクルで需要を把握し提供を調整するとともに交通行動の変容を目指す災害時の公共交通情報提供についてプロトタイピングを進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の進捗として、「研究課題1: ビッグデータの直感的把握手法の開発」としては、ここまでGISによる空間的視覚化、非負値テンソル(行列)分解(NTF,NMF)によるクラスタリングなどを開発し、そのワークフローを自動化しGTFSデータなどから簡単な手順による視覚化を実現した。「研究課題2: 基盤データへの当てはめ手法の開発」としては、ことでん(鉄道・バス)、青森市営バス、宇野バスのビッグデータに関して基盤データであるGTFSデータとのマッチングを進めた。これは分析を実施するために必須のプロセスであるとともに、基盤データに変化がある場合にその処理は容易ではないため、手法の自動化を現在進めているところである。これは、後述する変化が激しい災害時のデータ取得や活用においても必須の技術である。「研究課題3: ビッグデータ相互補完推定手法の開発」としては、青森市営バスと八戸市営バスの乗降人数データの比較手法の研究を進めており、GTFSオープンデータの有無の効果をデータの特徴から捉える分析を進めている。「研究課題4: 仮説検証のサイクルを加速する ビッグデータ解析システムの開発」としては、研究している手法を一度の分析で終わらせずシステム化したワークフローとすることを目指しており、課題1,2において自動化を進めながら、異なる時期、異なる地域などのデータに対しても同等の処理が可能になるようシステム化を進めている。以上、各課題において概ね順調な進捗があるとともに、次に書くように、災害時のデータ活用という課題を捉えながらより踏み込んだ研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
データ分析から活用にいたる時間を、本研究では当初年単位で想定しており、地域の交通計画でのデータ活用を主な対象として想定していた。これは引き続き研究を進める一方、西日本豪雨やコロナ禍による公共交通へのインパクトなど、より短期でのデータ収集、分析、地域での活用が求められる場面が研究遂行中に度々発生している。本研究を進めるにあたっては、このより短期的な課題ももう一つの課題として捉え、災害時のデータ収集・分析・活用をテーマとして設定する。両者の違いは時間的なものばかりでなく、モビリティの提供に制約がある中で利用者への効果的な情報提供やそれを通した行動変容がより求められる点にもある。移動需要にあわせて提供するのではなく、提供が限られ大きく変化も出来ない状況でいかに利用側をコントロールするかという問いになる。このような状況をデータで捉え、また適切な情報提供を行う方法論を本研究を通して検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初想定よりオープンデータが充実し、年度内に有償データの購入を行わなかったため、オープンデータ整備の技術支援のための旅費などは掛かったものの、全体としてより安価に研究に必要なデータが揃えられるようになった。 今年度は、この予算をさらにデータ整備に振り向け、データ収集サーバの構築やシステム化など研究用とでのオープンデータの活用を支援する仕組みの構築に使用する予定である。
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