本研究の目的は,応用一般均衡型都市経済(CGEUE)モデルを開発し,地域経済活性化のために有効な政策評価を行うことにある.研究一年目(H30)は,CGEUEモデルを開発し,研究二年目(H31・R1)はCGEUEモデルを用いて,リニア中央新幹線山梨県駅のアクセス交通整備効果計測,笛吹市バス交通ネットワーク再編による効果計測,甲府都市圏の効率的な道路ネットワーク維持管理政策評価を行った.研究三年目(R2)は,脱炭素社会に向けた都市交通政策評価,食と農に関連した産業誘致の政策評価を行った. 本研究は三年で終了する予定であったが,新型コロナウイルス感染症により三年目は学会が中止になり,ミーティングも開催できなくなった.その結果,研究経費の使用をはじめ研究進捗にくるいが生じた.そこで,四年目も研究を継続することにし,これまでの研究をさらに進めるとともに,学会発表,査読付き論文への投稿を積極的に行った. 具体的には,リニア中央新幹線山梨県駅からのアクセス交通整備では,域際収支条件を考慮することにより所得収支を便益に追加できることが明らかになった.その結果,山梨県駅から富士北麓地域までのアクセス交通整備を妥当とする費用便益分析結果を導くことができた. 食と農に関連した産業誘致政策では,山梨県昭和町において,隣接する山梨大学医学部および山梨大学病院との連携を念頭に,飲食料品製造業と飲食サービス業の誘致効果を計測した.その結果,飲食料品関連産業の誘致により高い地域活性化効果の得られることが明らかになり,これを「山梨フードバレー構想」として記者発表を行った. 効率的な道路ネットワーク維持管理政策では,高速道路料金を高速道路利用者の負担する燃料税額分だけ控除することにより,甲府都市圏内を並行する国道20号から中央自動車道へ転換が進み,その結果国道20号の維持管理費用が節約されるかを検討した.
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