研究実績の概要 |
本年度の研究成果は以下の通りである。 ①被災地10市町(宮古市、山田町、大槌町、釜石市、大船渡市、陸前高田市、気仙沼市、南三陸町、登米市、石巻市、女川町)の震災前後(2010年,2015年)の5年間の転出者は約52,000人であり、本研究の対象とした被災地外移転市町8市(盛岡市、滝沢市、花巻市、北上市、一関市、大崎市、仙台市、東松島市)を加えたカバー率は約29,000人、58 %程度である。②対象10市町の人口減少は約5万人、-9.4%であるが世帯の減少は約5,600世帯、-3%に過ぎない。③電話帳の対象地域の登録掲載数は、震災直後の2012年で世帯数比約60%、2019年でも50%以上となっている。④電話番号マッチングによる居住地移動のパターンを見ると被災地市町に継続して住んでいる世帯は62.9%であり、1/3以上の世帯が移動している。震災以降、地域を去った37.1%の世帯のうち、2019年までに戻ってきた世帯は740世帯、わずか0.6%となっている。⑤姓名マッチングによる居住地追跡の最大の問題点は同姓同名問題である。母集団規模を変えて、同姓同名者を調べた結果、母集団が1万人以下では事後チェック可能な最大4名程度であること、また地域によって姓名の分布に大きな偏りがあることが分かった。⑥前記から、多段階に母集団の数を限定して姓名マッチングすることにより、ミスマッチングを著しく減少できることが分かった。⑦岩手県の被災地全体では無転居世帯37,495世帯に対し、電話番号マッチングによる転居世帯は1割強の3,822世帯であった。⑧宮城県の津波被災地4市町では無転居世帯42,997世帯に対し、電話番号マッチングによる転居世帯は約15%の6,167世帯と、岩手県より多い。⑨姓名マッチングの結果、1,525世帯の同一市町内転居、1,059世帯の市町間転居の実態が明らかになった。
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