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2018 年度 実施状況報告書

都市鉄道整備によるアクセシビリティの改善と生産性向上効果の計測に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K04397
研究機関日本大学

研究代表者

金子 雄一郎  日本大学, 理工学部, 教授 (40434112)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード生産性 / アクセシビリティ / 都市鉄道 / インフラ整備
研究実績の概要

本研究は,都市鉄道整備によるアクセシビリティの改善がもたらす企業の生産性向上効果をミクロ及びマクロの両面から計測する手法を開発し,東京圏を対象に実証分析を行うものである.平成30年度は,主に以下の2点について分析を行った.
・東京圏において近年整備された鉄道路線を対象に,多時点の企業信用調査データベース(東京商工リサーチの「CD-Eyes」(企業検索CD))を用いて,開業に伴い新設された駅の周辺に立地した企業を特定し,業種や規模(資本金,従業員数),業績(売上・最終利益)等を把握した.その上で,実証分析手法の一つである差の差分析法(Difference in Differences)を用いて,鉄道整備によるアクセシビリティの改善がこれらの指標の変化に及ぼす影響の因果効果を推定した.具体的には,駅への至近性に応じて地域を処置群(アクセシビリティが改善された地域)と対照群(改善されなかった地域)の2つに区分し,各々の地域に立地している企業の生産性指標として従業員1人あたりの最終利益を算出し,開業前後での平均値の差を求めた.その結果,一部の駅において処置群と対照群の生産性の差分が正値となり,鉄道整備と生産性向上の因果効果の存在の可能性が確認された.
・東京圏におけるアクセシビリティと生産性の関係をマクロな視点から分析する前段として,最新の統計である「平成28年経済センサス-活動調査」を入手し,東京圏における従業人口の地域別・産業別の特性を分析するとともに,前回調査(平成24年)の結果と比較することで,近年の動向を把握した.その結果,従業人口の空間分布特性は産業間で大きく異なる傾向が見られること,平成24年と平成28年の間で東京都心部を中心に従業人口が約11%増加し,これには「医療,福祉」,「卸売業,小売業」などのサービス産業の増加が大きく寄与していることが分かった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成30年度は,まずミクロな視点からの分析について,東京圏における近年の新規整備路線として2000年12月に全線開業した都営地下鉄大江戸線を取り上げ,企業信用調査データベース(東京商工リサーチの「CD-Eyes」(企業検索CD))に収録されている開業前後の2時点の各企業の所在地情報や業種,規模,業績等に関する情報を用いて,同線の整備によるアクセシビリティの改善が企業の生産性に及ぼす影響の因果効果を推定した.この成果については,鉄道技術連合シンポジウム(J-RAIL2018)で発表を行うとともに,土木計画学分野の研究者と意見交換を行った.
一方,東京圏におけるアクセシビリティと生産性の関係をマクロな視点からの分析の基礎となる知見を得ることを目的として,最新の統計である「平成28年経済センサス-活動調査」を入手し,東京圏における従業人口の地域別・産業別の特性を分析するとともに,前回調査(平成24年)の結果と比較することで,近年の動向を把握した.
以上より,現在まで概ね順調に進んでいるものと考えられる.

今後の研究の推進方策

平成31年度の研究は,主に以下の2点について分析を進める.
・ミクロな視点からの分析について,前年度の研究による結果や検討課題を踏まえ,差の差分析法(Difference in Differences)を適用する上での課題である処置群及び対照群に属する企業の同種性を可能な限り確保したうえで,2000年以降に東京圏で整備された複数の鉄道路線を対象に,アクセシビリティの改善が企業の生産性に及ぼす影響の因果効果を推定する.また,一連の分析の過程で把握される新駅周辺への企業の立地動向についても,鉄道整備による立地促進効果の視点から分析を深度化させていく.
・マクロな視点からの分析については,前年度の「平成28年経済センサス-活動調査」に関する基礎的な検討結果に基づき,新規整備路線の駅周辺への従業人口の集積状況を把握するとともに,対象地域内の市区町村毎のアクセシビリティや従業人口密度と生産性の因果関係を分析する.生産性を表す指標としては,従業者1人あたりの付加価値額である労働生産性を採用する.そして,将来の鉄道整備にともなうアクセシビリティの改善や従業人口密度の増加による労働生産性の変化を推計可能な回帰モデルを構築する.

次年度使用額が生じた理由

(理由)
平成30年度は,差の差分析法を用いたアクセシビリティの改善が生産性に及ぼす影響の因果効果の推定方法の検討に時間を要したため,分析対象路線が少なく,分析用データを整備するための人件費が予定より低い結果となった.
(使用計画)
平成31年度において,「今後の研究の推進方策」に記載した研究を推進していくために必要な分析用データベースを整備するための人件費として使用する計画である.

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2018

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] ミクロデータを用いた都市鉄道整備による生産性向上効果の計測2018

    • 著者名/発表者名
      吉岡知弘,金子雄一郎,山本裕,中川拓朗
    • 学会等名
      第25回鉄道技術連合シンポジウム(J-RAIL2018)
  • [学会発表] 差の差分析法を用いた都市鉄道整備の社会経済効果に関する実証分析2018

    • 著者名/発表者名
      中川拓朗,金子雄一郎
    • 学会等名
      第25回鉄道技術連合シンポジウム(J-RAIL2018)

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公開日: 2019-12-27  

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