研究課題/領域番号 |
18K04404
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
天野 佳正 千葉大学, 大学院工学研究院, 助教 (40517976)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アオコ / ミクロキスティス / 細胞外多糖類(EPS) / カチオン / 群体形成 / 浮揚性 / 捕集除去 |
研究実績の概要 |
本申請研究は,アオコの代表種であるミクロキスティスの浮揚性を利用した新たなアオコ捕集除去プロセスの開発を目的とするものである。 前年度に引き続き,2019年も夏季に千波湖(茨城県)で発生したアオコ(主にミクロキスティス属)を採取し,塩化ナトリウム溶液を用いた抽出法にて結合性細胞外多糖類(tightly-bound extracellular polysaccharides; TB-EPS)を単離・粉末化し,その成分分析と物性評価を行った。TB-EPS水溶液(5,000 mg/L)中のEPSを酸加水分解した後,EPSを構成する単糖分析を行ったところ,8種の単糖を検出し,中でもグルコース,キシロース,ラムノースおよびマンノースの存在割合が高いことがわかった。また,200 mg/Lに調整したTB-EPS水溶液中のCODを測定したところ122 mg/Lであり,単糖・多糖を多く含むことを裏付ける結果であった。また,TB-EPS水溶液(0~10,000 mg/L)の粘度を測定したところ,TB-EPSの添加量が高くなるにつれて粘性が上がり,さらにTB-EPS(100 mg/L)と同時にカチオン(Ca(II)およびMg(II),ともに100 mg/L)を添加することにより,粘性はさらに高まることが明らかとなった。 さらに,TB-EPS(100 mg/L)およびカチオン(Ca(II) [2.2 mmol]およびMg(II) [4.4 mmol])を採取したアオコ試料に同時添加することで,ミクロキスティスの群体サイズが拡大し,浮揚性が高まることを確認した。さらに,同濃度条件の下,光照射の影響を調べたところ,明条件よりも暗条件においてアオコの浮揚性が高まる傾向にあることがわかった。 今後,更なる浮揚性の向上のための最適条件を見出すとともに,光条件にて浮揚性が変化する因子,例えばミクロキスティス細胞内の炭水化物含有量や脂質,タンパク質量,また栄養塩濃度や金属イオン量の変化について調べ,浮揚性との関係について検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請研究では,アオコ形成種であるミクロキスティスの浮揚性を利用したアオコ捕集除去手法を構築することを大きな目標としている。これまでの研究において,結合性細胞外多糖類(TB-EPS)の成分分析・物性試験を行ったところ,TB-EPSは有機成分を多く含み,水溶液中で高い粘性を示すことを明らかにした。さらに,水溶液中のTB-EPSとカチオン(Ca(II)およびMg(II))濃度を調整し,アオコの群体形成性と浮揚性を高めた上で光条件をコントロールすることで,より浮揚性が高まる可能性を見出した。 これらの研究成果は,学術論文(国際誌 [1報])や国内外の学会発表(4件)を通じ広く社会に情報発信しており,本研究の達成度は一定以上のレベルに達しているものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように,アオコ捕集除去を可能とする手法を設計する。ミクロキスティス(アオコ)の群体形成には,結合性細胞外多糖類(TB-EPS)あるいはTB-EPS中のタンパク質,ミクロキスティス細胞表面上の官能基が大きく寄与していると予想される。このため,タンパク質の定量分析や,FT-IR,TG-DTA分析を通じて表面官能基を明らかにし,ミクロキスティスの群体形成機構について明らかにする。また,ミクロキスティスを培養する際の光照射が群体形成と浮揚性促進に影響を及ぼしている可能性が示されたため,今後,更なる浮揚性が得られるよう,培養条件の最適化を図る予定である。
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