研究課題
本研究は,アオコ形成種であるミクロキスティスの浮揚性を利用したアオコ捕集除去プロセスの開発を目指すものである。アオコ(主にミクロキスティス)細胞を被う粘質性の結合性細胞外多糖類(tightly-bound extracellular polysaccharides; TB-EPS)を単離し,カチオン(Ca(II)およびMg(II))とともにアオコ試料に添加することで,アオコの群体形成・サイズ拡大を促し,浮揚性を高める(ストークスの法則)ことで水面への集積を試みる。アオコ細胞からTB-EPSを単離し,この試料の表面官能基を熱重量・示差熱同時測定にて調べたところ,250-290℃に重量減少のピークが見られたことからカルボキシル基の存在が示唆された。採取したアオコ試料に,TB-EPS,ならびにさまざまな混合比でCa(II)およびMg(II)を添加したところ,アオコの浮揚性が促進された。一例として,Ca(II)およびMg(II)のモル比を1:2にして浮揚性を調べたところ,Control系と比べて浮揚性が20%程度高まり,アオコの群体サイズも大きくなっていることがわかった。アオコ細胞やカルボキシ基を有するTB-EPS表面は負に帯電していると予想され,これらが正電荷を有するカチオンと架橋することで,群体サイズ拡大と浮揚性向上を促したと推察される。さらに,アオコの浮揚性は細胞内の炭水化物量やタンパク質量に依存することから,アオコ試料を24時間明条件または暗条件にて前培養し浮揚性実験を試みた。その結果,アオコの浮揚性は,明条件よりも暗条件で培養した方が10-20%高いことが見出された。明条件で培養することで,1細胞当たりのクロロフィルa量が高まり,これが細胞重量に影響を及ぼしたと考えられる。今後の展開として,各条件を最適化することでより精度の高いアオコの捕集技術の開発が期待できる。
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