本研究の目的は分流式下水道に流入する汚水のリスク物質-生物検定によって得られた毒性量について,特に疎水性の有機物質に起因する毒性量について発生源を知ることである.疎水性の有機物質に属するリスク物質は多くは汚泥へ移行し,一部は緑農地還元される.想定される発生源は多岐にわたるが本研究では申請者らの先行研究により疑いが高いと考えられた都市的な生活に起因する生活排水か雨天時流入かに焦点をあて毒性評価値(いわゆるMicrotox毒性試験)の発生源を探る.下水処理場は生活排水をはじめさまざまな廃水を受入れ浄化する.処理は受入廃水の主成分たる有機系のmacropollutantsを対象とするが,そのほかにも微量な有害物質(micropollutants: 重金属類や微量有機有害物質)を含んでいる.本研究では特に疎水性の有機物質に着目する.方法論として,発生源の疑いを都市的な生活排水か雨天時流入に絞り込み,どちらが発生源なのか?を明らかにする. 本年度は生活排水に狙いを絞りそのその直接採水により生活排水毒性を算定した。またその結果を主要な,高い毒性または低い毒性をもつ下水処理場の汚泥と比較検討をした。比較の結果として,違いの原因は雨天時流入ではなく,また生活様式でもないことが明らかとなった。すなわち生活系の流入毒性負荷はいずれの処理場でも大きな違いはないことが明らかとなった。そこで処理場ごとの処理プロセスの違いを検討したところ,余剰汚泥の毒性が高いところと低いところでは,最初沈殿池の運用の有無に違いがあることが分かった。高いところでは最初沈殿池を用いていたが低いところでは直接二次処理を行っていた。そこで最初沈殿池の沈殿物を調べたところその毒性は高く,更に詳細に検討したところその毒性負荷が最終の,余剰汚泥の負荷を増大させている可能性が示された。
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