本年度は、1)下水汚泥と2)下水の両方を対象とし、その処理とエネルギー・資源回収について検討した。 1)高温・高濃度消化に余剰汚泥の前加熱処理を組み合わせた嫌気性消化において、活性化と脱色を目的として消化槽への活性炭または脱水時における塩化鉄の添加を検討した。流入TS濃度約7.5%、温度55℃、HRT20日において、VS分解率57.7~60.3%、ガス発生率0.480~0.500 NL/gVS、メタン発生率0.298~0.306 NL/gVSが得られた。添加した活性炭がVSとして測定されることを考慮すると、コントロール槽と活性炭添加槽の間で処理結果はほぼ同等であった。総合的なパラメータに大差はなかったものの、消化槽内の溶解性物質には大きな違いがあり、特にコントロール槽で平均約300 mg/Lであったプロピオン酸が活性炭添加槽では約10 mg/Lまで低下した。また、消化汚泥ろ液の色度は約3割除去された。 嫌気性消化槽の微生物叢はおおまかには似通っていたが、活性炭のDIET活性化や阻害物質の吸着、微生物集積の作用などにより代謝経路の変化が示唆された。また、これが上記した消化槽内有機酸の減少につながったと推測された。消化汚泥の脱水と脱色を調べたところ、Fe添加率として6~10%/TS程度で両者を満たし、色度を元々の約1/4まで低下させることが可能であった。今後は、活性炭添加の経済性についても検討が必要である。 2)下水の前凝集処理にAlを適用し、SS、リン等の除去性を観察した。Al添加率2.5~100 mg/Lの範囲で50%程度またはそれ以上のT-P除去率が得られ、嫌気性消化槽に入るアルミニウム濃度を推定できた。また、添加率が高まると上澄み水の微細フロックが増加することが課題であった。
|