研究課題
水銀は極微量でヒトや野生生物に対し毒性を有する物質である。大気中水銀には0価のガス状水銀(GEM) 、2価の反応性ガス状水銀(Hg(II):GOM)、粒子状水銀(PBM) がある。その95 %以上を占めるGEM は、水に溶けにくい為、大気中での寿命が長く、全球を循環する。そのため水銀の排出から遠く離れた地点でも高濃度に水銀が沈着することがある。大気中水銀は最終的に光化学反応等により水に溶解しやすいGOM となり、降水により除去される。GOMの降水による除去過程はレインアウトが主とされ、沈着量は降水量に依存する。しかし近年、自由対流圏からのGOMの取り込みが指摘され、降水のパターン(対流性降雨(積乱雲)、高地での降雨など) により沈着メカニズムや沈着量が異なると言われているが定説はない。屋久島の1370 m 標高で、10 mm 降雨毎に連続採取した降水中水銀の濃度の動態について、気象擾乱、空気塊の動態、雲頂高度等のデータセットと合わせて解析した。その結果、周囲に大気中水銀の放出源がないにも関わらず、水銀採掘現場など汚染地域と同程度かそれ以上の水銀沈着量となった。本研究結果は、現在論文投稿中である。さらに、蒜山演習林内での調査を前年度から継続した。渓流水、降水、地下水、樹幹流、林内雨の観測を行った。さらにこれらの観測と合わせて、リターの採取も行った。採取したサンプルは凍結乾燥処理し、水銀、C、Nの分析を行った。これらの結果は現在解析中であるが、今後森林域内での土壌からの水銀の大気への再放出についても検討を行っていく予定である。
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雪氷
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