研究実績の概要 |
本年度は、新規嫌気性処理リアクターの開発を目指して、硫酸塩を高濃度に含む模擬廃水を供給することで処理性能の評価を行った。新規技術は、1相もしくは2相式メタン発酵法に関する従来の概念を脱して、前段と後段が上下に半連結した構造により、後段のメタン発酵によって生成されたバイオガス前段に無動力で供給される仕組みである。この仕組により、前段ではストリッピングにより阻害物除去を行い、後段においてメタン生成反応の安定化・高速化を図った。本連続実験では、流入水に含まれる硫酸塩濃度を段階的に上昇させて、実験系および対象系リアクターを並列で運転し、有機物除去性能の把握とともに、硫化物の除去特性の比較を行った。本実験では、両リアクターに高濃度の硫酸塩を含む模擬廃水(COD: 10,000 mgCOD/L、SO42-: 800 mgS/L)の処理を行い、有機物負荷 10 kgCOD/m3/dayの条件下で運転した。本リアクターでは、まず上段に模擬廃水とともに、硫化物を含む下段の処理水を循環供給して、ガスストリッピングによって硫化水素を除去した。ストリッピング後の上段の処理水を下段に供給し、メタン発酵および硫酸還元を進行させた。硫酸還元によって生成された硫化物は、再び上段に循環されることで、ガスストリッピング除去が進行させることができた。その結果、本リアクターでは、バイオガスに伴って硫化物がストリッピング除去され、処理水に含まれる硫化物濃度が400 mgS/L以下に低下すること確認された。これらの硫化物の除去性能は、対象系を上回っていることを証明できた。また、本リアクターの実用化に向けて、リアクター構造や運転条件の決定に向けたデータやノウハウの蓄積も進めた。以上の結果から、本新規リアクターの開発を達成することができた。
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