研究課題/領域番号 |
18K04418
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研究機関 | 国立研究開発法人土木研究所 |
研究代表者 |
鈴木 裕識 国立研究開発法人土木研究所, 土木研究所(つくば中央研究所), 研究員 (20762272)
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研究分担者 |
田中 周平 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (00378811)
對馬 育夫 国立研究開発法人土木研究所, 土木研究所(つくば中央研究所), 主任研究員 (50462487)
村田 里美 (水上里美) 国立研究開発法人土木研究所, 土木研究所(つくば中央研究所), 研究員 (10573678)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ナノマテリアル / 水溶性 / 下水処理 / 酸化チタン / フラーレン / 存在実態調査 / 水酸化フラーレン / 分析法開発 |
研究実績の概要 |
本研究では、水溶性ナノマテリアル(HNMs)を対象に、生活排水や産業排水の公共用水域への経路である下水処理場に着目し、下水および下流水環境中の動態と生物への毒性影響の把握を目的として、(1)~(3)を実施した。 (1)HNMsの1種として化粧品や顔料に含まれ水環境への流出が懸念される酸化チタン(TiO2)に着目し、下水処理場の24時間通日調査を実施した。流入下水、放流水、各下水処理過程の試料を2時間毎に採取してコンポジット試料を作成し、孔径100 nmのPVDF膜でろ過をしてICP-OESによりナノTiO2を測定した。その結果、放流水中の全チタン濃度は3.14 μg-Ti/L(流入水に対する除去率91.3%)であったのに対してTiO2濃度は1.77 μg-Ti/L(流入水に対する除去率57.2%)であり、TiO2は処理水中に残存しやすい傾向が示唆された。 (2)HNMsとの比較データとして、通常のフラーレン(C60)の水環境中存在実態調査を実施した。琵琶湖・淀川流域の湖水、河川水、下水処理水21試料を採取し、LC-MS/MSによりC60を測定した。その結果、11試料からC60が定量下限値(1.26 ng/L)以上で検出され(検出率:52%)、最大濃度は612 ng/L(河川水)であった。下水処理水からの検出率は低く(調査した7処理場中2ヵ所で検出)、最初沈殿池汚泥や活性汚泥への吸着による除去が示唆された。今後は、水溶性フラーレンについても同様の調査を実施し、挙動を比較する予定である。 (3)水溶性フラーレンとして、水酸化フラーレン(C60(OH)n・mH2O)に着目し、分析法の開発に着手した。分子量が一定ではないために複数の化合物(群)を包括的に定量する必要がある。そこで、試料に化学処理を施して全てC60に変換し、処理前後の濃度変化を算出することによる定量手法を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3つの課題を遂行することができた。 (1)研究開始直後から24時間通日下水処理場調査を実施することができた。特に、TiO2の通日調査データの獲得に成功し、1件の学会発表を行った。 (2)比較対象としてのC60の分析方法についても試行錯誤の上に確立でき、下水処理水および下流の水環境を調査することで、流域中の種々の水媒体中の存在実態データを蓄積することができた。 (3)水酸化フラーレンの分析方法について、確立にまでは至らなかったものの、定量化に繋がるアイデアを練ることができ、検討実験を実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、(1)~(3)の課題の実施を予定している。 (1)2018年度に得られたTiO2(金属系の水溶性HNMs)の下水処理場での挙動データを踏まえ、放流先の水環境中における生物への影響の検討を目的として、水生生物への暴露試験を行う予定である。 (2)有機系HNMsとして水酸化フラーレンの存在実態調査の実施を目的として、分析方法の開発を推進する。具体的には、熱分解GC-MSの導入等を検討することにより、定量化を目指す。 (3)水中の有機汚染物質に対する有機系HNMsの吸脱着特性の把握を目的として、従来の下水処理では除去が不十分であるPFOS等を対象に、水酸化フラーレンや、同様に水溶性となる官能基が修飾されているカーボンナノチューブ等への吸脱着試験を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初2018年度の実施を計画していた室内実験研究等を次年度に行うこととしたため、その実験に関わる物品費の使用額分を次年度に繰り越すことととした。また、打合せに要する旅費についても、当初計画よりも実施回数が減少したために打合せに関わる旅費の使用額分を次年度に繰り越すことととした。
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