研究課題/領域番号 |
18K04421
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
永井 宏 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 准教授 (70413797)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 新設杭 / 既存杭 / 埋戻し土 / 単杭 / 模型実験 / 数値解析 / 支持力 |
研究実績の概要 |
本研究では,既存杭を撤去した後の埋戻し土が近接する新設杭の支持性能を評価することを目的とし,模型実験と数値解析にて検討を行っている.令和2年度は,新設杭の周面抵抗と水平抵抗の2つの支持性能に及ぼす影響に関して検討を行った. ケース1(新設杭の周面抵抗に関する検討):模型砂地盤にて埋戻しの過程を模擬した上で,新設杭が埋戻し土に杭径の半分重複することを想定した杭の押込み載荷実験,ならびに有限要素法(FEM)を用いた数値解析にて検討を行った.本検討では,杭先端抵抗が発揮しないよう治具を配置して杭の周面抵抗に着目すると共に,埋戻す充填砂の密度を変化させて,杭の周面抵抗力度の最大値や周面抵抗力機構に寄与する杭の近傍地盤で生じるせん断破壊について検討した.得られた知見は以下の通りである.①杭周面抵抗力度の最大値は充填砂の条件で異なり,高密度の条件下では埋め戻しがない場合に比べて約1.2倍大きくなった.②充填砂が周辺地盤と条件が異なる場合,杭近傍地盤のせん断応力度は充填砂の領域だけでなくその反対側の地盤でも影響が現れる.これにより,杭近傍地盤で生じるせん断帯の形状や厚さが変化する.③周辺地盤と充填砂でのせん断破壊をそれぞれ考慮した杭の周面抵抗力の算定式を構築することが相応しい. ケース2(新設杭の水平抵抗に関する検討):新設杭が埋戻し土に杭径の半分重複するケースを想定し,重複する埋戻し土の諸条件(埋戻し土の大きさ:杭径の1.0~2.0倍,変形係数:周面地盤の変形係数の0.1~5.0倍)が杭の水平抵抗に及ぼす影響についてFEMを用いたパラメトリック解析を行った.その結果,埋戻し土の条件によって杭の水平地盤ばね剛性が10~20%程度の影響が生じることを明らかにした.解析結果の分析から,埋戻し土の影響を考慮した杭の水平地盤ばねとして等価変形係数を用いて評価する方法を提案した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度では,新設杭に近接する埋戻し土が杭の周面抵抗力に及ぼす影響を実験的に把握すると共に,解析的検討から周面抵抗力機構に関して杭近傍地盤での地盤のダイレイタンシー効果やせん断帯の厚さなどが分析できた.また,水平抵抗に関しては,限定された条件下ではあるが埋戻し土の影響を考慮した杭の水平地盤ばねの評価方法を提案した.以上のことから,「おおむね順調」と自己評価した.
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今後の研究の推進方策 |
杭の周面抵抗力に関しては,模型砂地盤中に着色砂を複数層上に敷設した杭の載荷実験を実施し,実験後に着色砂の変状を観察・計測することで,せん断破壊面(せん断帯)の形状を実験的に検証する.これまでの結果・分析を元に,埋戻し土の影響を考慮した杭の周面抵抗力の算定法を構築することを目指す.また,水平抵抗に関しては,埋戻し土の諸条件に「位置」を追加したパラメトリック解析を実施して,杭の水平地盤ばね剛性に及ぼす埋戻し土の影響を明らかにする.解析結果を分析して力学モデルに基づいた埋戻し土の影響を考慮した杭の水平地盤ばね剛性の算定法を構築することを目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:新型コロナウィルスの感染拡大のため学会発表会等が中止となり,出張旅費の支出が大幅に減ったため. 使用計画:追加の実験や数値解析に必要な経費に使用する.
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