本研究では、コンクリート製造・施工の効率化を進めるため、数値計算によって調合設計や養生計画を策定するための支援システムを構築することを目的とする。すなわち、コンクリート部材内のセメント水和反応、微細組織形成、発熱・熱伝導、水分移動、強度発現を精緻に予測するシミュレーション技術をベースとして、計算によって調合や養生の最適解を導出するシステムを構築する。 2018年度は、小型風洞装置を製作し、これを利用してコンクリート試験体からの水分逸散速度を調べるための実験を行った。この実験結果から、水分逸散に関する基礎物性値(コンクリート表面の物質移動係数、交換速度係数など)を明らかにした。 2019年度は、2018年度に明らかにしたコンクリートの水分逸散の基礎物性値を利用して、熱拡散・水分逸散シミュレーションのプロトタイプモデル(プログラム)を構築した。また、予測計算結果の妥当性を検証するために必要な実測データを得るため、各種の調合・湿潤養生期間のコンクリート試験体を作製し、温度と含水率の経時変化ならびに強度を調べる実験の計画を策定した。 2020年度は、コンクリート部材内の発熱・熱伝導・水分移動とコンクリート部材外への熱拡散・水分逸散を統合して予測計算することが可能なシミュレーションモデルを構築した。さらに、この成果を日本建築学会論文集に投稿した。 2021年度は、構築した調合設計・養生計画支援システムの妥当性の検証を行い、適切な支援結果が示されていることを確認した。また、本研究全体の取りまとめを行った。
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