研究実績の概要 |
本研究の目的は数値流体解析手法を用いて,準定常状態に達した津波および河川堤防の決壊・越流によって生じた氾濫流が構造物に及ぼす抗力及び揚圧力を評価し,その支配的なパラメーターを明らかにした上で,簡易な評価手法を確立することである.
本年度は,非圧縮性流体の支配方程式であるNavier-Stokes方程式を浸水深方向に積分した浅水方程式にもとづく有限体積法流体解析ソルバー(2次元解析非静水圧ソルバー)を用いたケーススタディを行った.用いたソルバーは,一般的な静水圧を近似した浅水方程式とは異り,構造物周りの不均一な流れを表現するために浸水深方向の変数分布を次のように仮定した.平面内の流速分布を線形,鉛直方向の流速分布は2次式,圧力分布は線形な静水圧分布と2次式の動圧分布を導入する. 開水路中に設置された角柱に作用する水平力を計算し,静水圧を近似した既往モデルによる計算結果,既往論文実験結果と比較することで,その有効性の検証を行った.開発した2次元解析非静水圧ソルバーは静水圧を仮定した既往モデルと異り,既往実験結果で観察されるChoking現象を再現することができ,流況も概ね合致した.ただし,チョーキングに移行するフルード数や抗力係数に実験との差異が見られた.境界条件等の違いが影響していると考えられ,今後3次元数値流体解析との比較検討を通して原因究明に務める.
また,上記の2次元非静水圧ソルバーで取り扱った解析ケースの3次元数値流体解析も取り行った.2次元解析に較べて,実験に近い傾向を示したがチョーキングに移行するフルード数は既往実験結果より大きく,抗力係数も低い値となった.差異の原因として,既往実験における角柱下流の境界条件の情報不足が挙げられ,解析においても下流境界条件をパラメーターとして解析を行った.今後乱流モデルの影響等を加味して検討を行う.
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