本研究課題では、低コストで汎用性の高い地下構造探査手法である常時微動計測を行うにあたり、通常はノイズ源として扱われることの多い交通振動(鉄道・道路交通)を積極的に信号源として利用する方法を確立することを目指している。令和2年度の研究実績としては、まず、令和元年度に実施した幹線道路沿いでの交通振動の計測結果について分析を進めた。その結果、直線アレイで測定した道路交通振動に地震波干渉法の理論を応用することにより、浅層レイリー波探査における加振記録と同様の地動波形を擬似的に作成することができることを明らかにした。さらに、名古屋大学東山キャンパスにおいて交通振動の強度が低い深夜の常時微動を測定し、この場合にも地震波干渉法を適用することで擬似加振記録を合成することが可能であることが分かった。これらの結果を総合して、新幹線のような束一的な列車走行振動よりは地下鉄などの列車走行振動が、鉄道振動よりは道路交通振動が擬似加振記録の合成に有利であることを明らかにした。また、日中の幹線道路沿いの振動と夜間の振動による分析結果を比較することにより、擬似加振記録に対する振動強度の影響を明らかにした。これらの成果は、第17回世界地震工学会議や日本建築学会2020年度大会において発表している。
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