高温時鋼材のひずみ速度と鋼部材・構造全体の火災時終局強度の関係を解明するために、ひずみ速度に着目した高温素材引張試験、鋼部材の高温載荷実験と数値解析をし、これより火災時におけるひずみ速度変化が部材終局耐力・変形性能に及ぼす影響を検討する。ひずみ速度の視点から鋼材の高温時機械的性質~部材実耐力・実変形性能の関係を新たに明らかにする。またJISに規定された現行高温素材試験の画一的なひずみ速度設定値が持つ工学的意味と問題点を明らかにし、現行試験法の改善も視野に入れた建築耐火向け新試験法の開発と提案を目指す。 最終年度においては、鋼梁の高温曲げ強度、鋼柱の高温全体座屈、およびそららの崩壊温度評価に対して、ひずみ速度の影響を含んだ鋼材有効高温降伏強度による耐火性能評価法を検討した。昨年度の小型鋼梁および鋼柱の温度一定・荷重漸増実験結果と、一定荷重・温度上昇実験結果を参考に、温度、荷重比、変形速度、加熱速度がパラメトリックに変化した場合の曲げ強度、全体座屈耐力、崩壊温度と、各ひずみ速度下の高温素材試験結果から評価された曲げ・座屈設計値との対応関係を詳細に検討した。梁の高温曲げ強度と崩壊温度は、ひずみ速度が大きな場合(3or7%/min.)のひずみ2%時応力で与えられる有効降伏強度で、一方柱の全体座屈に関しては、ひすみ速度が小さな場合(0.3%/min.)の0.2%offset耐力で与えられる有効降伏強度で評価可能であることが分かった。現状の高温鋼材引張試験において、通常のひずみ速度(0.3%/min.)は高温全体座屈評価に、一方、試験途中にひずみ速度を上昇させた鋼材強度は高温曲げ強度に対応可能であることを示した。すなわち、今までのJISの素材試験法を活用し、試験途中にひずみ速度を所定値に上げるという新試験法で、実際上の梁と柱の高温強度が評価可能であるという成果が得られた。
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