室内外2方向同時暴露状態での実環境暴露試験および室内暴露試験を行った。まず,実暴露試験ではRC供試体を建築物の開口部に暴露面が室内外それぞれ面するように設置し,実際の建築物の壁の暴露状況を再現した試験を行った。なお,屋外側面は南向きとし,試験は福岡市にて2020年6月17日~2021年2月2日まで行った。この間,屋外側面は自然の温湿度と日射環境が作用し,室内側では常時空調を稼働させ室温23℃,相対湿度は60%を目標に管理した。 次いで,室内暴露試験では室内外で異なる温度・湿度が同時に2方向から作用する環境を実験的に再現できる暴露試験装置を作製し,試験体内部の温度・含水状態が中性化速度および中性化が鉄筋位置まで到達した後のコンクリート中の鉄筋腐食速度に及ぼす影響についてそれぞれ検討した。実験では夏季と冬季環境を想定し,夏季では日射の影響を受けて高温となり冬季では低温となるように屋外面側に作用させ,かつ室内側は空調により一定の温度・湿度に保たれているような状況を再現した。 作製した2方向暴露試験装置は,室内外の実暴露に近い温湿度環境を再現し,冬季・夏季での室内外と断熱材有無によるRC部材の劣化の特徴を再現可能とし,以下の知見を得た。 屋外側への断熱材が施工された場合,室内側の温度と含水率変化にも影響を及ぼすため,室内側からの中性化や鉄筋腐食速度もそれに応じて変化した。たとえば,夏季では,外断熱は炭酸ガスや水分の侵入抑制効果のほか,温度上昇の抑制により,外断熱施工面のみならず室内側の中性化の進行と鉄筋腐食速度が抑制された。一方で冬季では外断熱によりモルタルの温度は全体的に室温に近い値となるため,中性化の進行を早める危険性が示された。ただし,結露の発生の防止に外断熱は有効に働き鉄筋腐食速度を抑制した。
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