研究課題/領域番号 |
18K04440
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
山下 哲郎 工学院大学, 建築学部(公私立大学の部局等), 教授 (80458992)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ラチスシェル / 円筒 / 軸圧縮 / 座屈 |
研究実績の概要 |
2018年度の当研究課題の実績は以下の通りである 1)軸圧縮を受ける縦型円筒ラチスシェルの座屈解析手法の確立:軸圧縮を受ける薄肉円筒シェルはその座屈後の非線形挙動が非常に複雑で、座屈後経路から2次、3次分岐を生じ階段状に耐力劣化を生じ、最終的にダイヤモンド状の座屈変形を生じることが知られている。このような挙動の解析は静的な弧長増分法解析では不可能であるが、本研究の重要な目的の一つが座屈後耐力と靭性の評価であるため、質量、減衰を導入して動的に解析する手法を確立し、汎用FEMプログラムを用いて最大荷重以降の座屈後経路の解析を可能とした。 2)弾性座屈挙動におけるRS座屈荷重の精度検証:上記動的解析手法を用い、薄肉の軸圧縮円筒ラチスシェルで弾性座屈後の安定耐力が大きな初期不整を与えた場合の耐力に漸近すること、山田、CrollによるRS座屈荷重により良好に近似し得ることを検証した。以上1)2)についてはIASS2018および日本建築学会大会にて発表した。 3)座屈モードに関する研究:連続体シェルと異なりラチスシェルには個材座屈も生じる。個材座屈を生じやすい屋根型のH型鋼ラチスシェルを対象に弾性座屈において全体座屈と個材座屈を分ける条件を整理し、APCS2018と日本建築学会大会で発表すると共に、建築学会構造系論文集に投稿し2019/5月号に掲載が決定した。 4)異方性の座屈に対する影響:等方性の連続体シェルと異なり、ラチスシェルでは格子の構成による異方性があり得る。数値解析により屋根型の連続体シェルにおいて異方性の線形座屈荷重への影響評価と連続体置換による座屈荷重解との比較を行い、異方性が強い場合連続体置換解との誤差が顕著になることを確認した。論文は構造工学論文集2019に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のように2018年度には主にFEM解析により弾性座屈に関する研究を実施したが、本研究の重要な目的の一つである座屈後耐力と靭性の評価には、塑性域における座屈ならびに座屈後挙動の解析が必要である。しかしながらこのような強非線形問題では、数値解析の精度を実験と比較して検証する必要がある。座屈後経路も含めた弾塑性座屈挙動の数値解析の精度を検証するために、3Dプリンターで製作したアルミ製の小型円筒ラチスシェル模型の座屈実験を計画中である。実験用模型を計画当初より変更して3Dプリンターで製作することとしたが、予算範囲で製作可能な会社の選定と、製作可能な試験体の設計に時間を要したため、当初2018年度に実施予定であった実験を2019年度に延期した。一方、実験における変位計測は3次元非接触計測システムを使用するが、実験に先立ちほぼ同形のナイロン製模型の座屈実験を行い、変位計測の演習を行った。 また実験の準備と並行して数値解析による研究も実施中である。正三角形格子で構成された金属製縦型円筒ラチスシェルにおいて、降伏荷重と幾何学的非線形性を考慮した弾性座屈荷重で定義される正規化細長比と弾塑性座屈後挙動の関連を調べ、同じ等方性でも三角形格子の水平材が円筒の母線方向と円周方向を向く場合で座屈後挙動が異なり、母船方向を向く場合の方が座屈後耐力の低下が緩やかで靭性に富むことが判明した。結果は建築学会大会に投稿し、9月に発表予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進予定は以下の通りである。 2019年度:3Dプリンターで製作したアルミ製円筒ラチスシェル試験体の座屈実験を実施し、数値解析の妥当性を検証する。またせん断、曲げに対する座屈解析を開始する。 2020年度:アルミ試験体によるせん断、曲げ座屈実験を実施する。また正三角形格子だけでなく、六角形や菱形格子なども対象に弾塑性座屈特性と座屈後挙動を主として解析により調査し、靭性の高いシェルの条件を定量的に抽出する。以上の弾塑性座屈に関する知見をとりまとめIASSなどの国際学会に発表する。また搭状構造物としての地震荷重の評価を行う。 2021年度:地震荷重に対する座屈解析を実施し、靭性の高いシェルの条件を定量的に整理する。また研究成果を論文にとりまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究対象のような強非線形問題では、数値解析の精度を実験と比較して検証する必要がある。座屈後経路も含めた弾塑性座屈挙動の数値解析の精度を検証するために、3Dプリンターで製作したアルミ製の小型円筒ラチスシェル模型の座屈実験を計画中である。実験用模型を計画当初より変更して3Dプリンターで製作することとしたが、予算範囲で製作可能な会社の選定と、製作可能な試験体の設計に時間を要したため、当初2018年度に実施予定であった実験を2019年度に延期した。従って次年度使用額は主として試験体と実験装置の製作費用に充当する予定である。
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